【完結】吸血鬼の花嫁~罪人聖女と呼ばれた私は、再会した幼馴染の彼に溶けるほど溺愛されています~

第3話 名前で呼んで?

 目の前にいるこの若い公爵に自分は食べられるのだと、そう人生の終わりを覚悟したフィーネだったが、返ってきたのは甘い言葉とそして優しいぬくもり。
 思わず自分の頬に添えられた温かい手に両手を重ねてしまう。

「──っ!」

 フィーネはそのまま涙が止まらなくなり、その雫が二人の手を濡らす。

「なんででしょう……どうしてか涙が止まりません」
「フィーネ……」

 感情極まった彼女を、今度はオスヴァルトが力強く抱きしめる。

「私は君を虐げたりしない」
「……」
「君のことを大事にするから」
「エルツェ……公爵……」

 そのフィーネの絞り出したようなか弱い言葉に、オスヴァルトはある願いで返した。
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