【完結】吸血鬼の花嫁~罪人聖女と呼ばれた私は、再会した幼馴染の彼に溶けるほど溺愛されています~

第9話 吸血鬼の秘密

 馬車の中で見たその人間じゃない姿が、フィーネの視線に映った。
 彼女──エルゼは一瞬だけその本来の姿を見せると、目を閉じて再び柔らかい表情に戻る。

「ふふ、びっくりしたかしら?」
「は、はい」
「でもオズも吸血鬼なのを知っているでしょう? 私もなの」

 そう言いながらプリンを一口食べると、子供のような無邪気な顔をして喜ぶ。

「リンっ! このプリンさいっこー!!!」
「ありがとうございます、シェフに伝えておきます」

 なんとも異様な空気ではありつつも、怖くはない不思議な感じは彼と彼女がフィーネに敵意を向けていないからだろう。
 フィーネは一つ疑問に思うことがあった。

(吸血鬼ってそんな当たり前の存在じゃないはず。この人たちは……)

 その言葉を悟ったようにオズは手をテーブルの上で組むと、自分たちのこと、そして吸血鬼について語り始める。

「フィーネ、この屋敷で僕と母上だけが吸血鬼だ。そしてそのことを知っているのは僕たちとリン、そして君だけだ」
「四人だけ……」
「ああ」

 フィーネは手を膝に置いておとなしくその言葉に耳を傾ける。
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