【完結】吸血鬼の花嫁~罪人聖女と呼ばれた私は、再会した幼馴染の彼に溶けるほど溺愛されています~
 虐げられていたなどと言えば、教会を敵に回してしまうことになる。
 領民の中には教会に足しげく通って信仰深い者もいたため、配慮したのだ。
 だが、しかし隠せないことが一つ──

「でも、フィーネ様って罪人聖女って言われてたって噂だよな」
「ああ、あの礼拝堂の火事の原因になったってやつだろ? なんでそんなやつをオスヴァルド様は妻に……」
「どーせ、色仕掛けでもしたんだろ」
「ああ、なるほどな」

 フィーネにも聞こえてくるほどの声の大きさで話されている内容は、世間の一部に広がっている噂。
 貴族たちの中でも情報収集に優れた者も多く、こうしてフィーネの悪い噂を聞きつけて非難をする者もいた。
 真実はフィーネの親友のせいであったのだが、自分の証言を言っても信じてもらえるわけないと、フィーネはワインを嗜みながら会話する貴族たちの話を唇を噛んで聞かないようにと務めた。

「私の妻を非難するのはやめていただきたい」

 他の貴族たちと会話していたオズが、フィーネの悪い噂を口にして非難する者たちにそう言いながら近寄っていく。
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