【完結】吸血鬼の花嫁~罪人聖女と呼ばれた私は、再会した幼馴染の彼に溶けるほど溺愛されています~
「君は雪の中で倒れていたんだ、覚えてる?」
「……」

 やはり彼の言葉がわからない。
 リンは自分が異国の地に来てしまったことに気づき、そして彼も他国の人間であるということに気づいた。

「ちょっと待っててくれるかい?」
「(こく)」


 部屋を去ってしばらくして、彼は分厚い辞書のようなものを持ってきた。
 彼はそのページをペラペラとめくると、何かを探すようにしながらたどたどしく話す。

「なに………なまえ……?」

 リンはもしかして自分の名前を聞いてくれているのか、と思い答える。

「りん」
「リンか! 君はここでしばらく休むといい、それから……えっと……これじゃあ伝わらないね」

 ペラペラとまた辞書をめくると、また単語で伝える。

「住む、あなた……ここ」

 単語から推測するに、ここに住んでいいと言っているのだろうか、と戸惑う。
 そんな風に不安な表情を浮かべていたら、少年はそっと彼女の頭を撫でた。

「リン、君はここにいていいんだ」

 リンはその時なんて言われたのかわからなかったが、なんとなくここにいていいようなそんな雰囲気を感じ取った。
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