Triangle Love 3 ~ Close to you ~
カナメくんの家に到着した。

玄関を通過して、彼の部屋に入れてもらった。

『ちょっと待ってて。』

そう言い残したカナメくんは部屋を出て行ってしまった。

僕はローテーブルの前に置かれた座椅子に座った。

部屋の中を見渡した。

もう何回もこの部屋には来ているけど、僕はこの場所が大好きだ。

ここに来ると少なからず、カナメくんの生活を覗くことができる。

勉強机の上に置かれた読みかけのマンガとか。

少し斜めにハンガーにかけられている制服とか。

今日の朝まで着ていた寝る時用のジャージが、シーツと掛け布団の隙間から見えていたりとか。

そんな発見が嬉しい。

言われた通りにカナメくんの部屋の中で待っていると、歌いながら戻って来た。

『ハッピバ〜スデ~トゥユ~♪。』

音程が微妙にずれた、独特で素敵な歌声だった。

特大のホールケーキを持ってきてくれた。

『毎年のことだけどさ。うん。誕生日プレゼント。おめでとう!』

カナメくんは笑顔で言ってくれた。

毎年、僕が好きなケーキ屋さんのスイーツを買ってきてくれる。

本当に嬉しい。

『ありがとう!めちゃくちゃ嬉しいよ!』

お礼を言った。

心から嬉しいってことが、少しでも伝わっているといいけど。

『毎年同じ店のケーキだから飽きてないか?』

カナメくんが僕に尋ねた。

当然、飽きる訳がない。

『好きなお店の物だから飽きないよ!それに毎年ケーキの種類を変えてくれてるよね?去年はフルーツタルト、その前はシュークリームをたくさん!』

『よく覚えてるな。とにかく喜んで貰えたなら良かった!』

『あ、これは僕からの差し入れ!』

僕が作ったアップルパイをカナメくんに渡した。

『今日も作ってきてくれたのか。いつもありがとな!イクヤ、お菓子も飯も美味いよな。あっ。取り皿とナイフ持って来る。』

そう言ってカナメ君はナイフでケーキとアップルパイをカットして、小皿に取り分けてくれた。

やっぱり好きだな。

こうしてカナメくんと遊べるなら、このままでもいいかもしれない。

あれ?

なんで今年だけ、誕生日の前日にプレゼントをくれたんだろう?

いつもは当日にくれたのに。

まぁ、いっか楽しいし。

明日はカナメくん、何か用事があるんだと思う。
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