研がれる私/長編エロティックミステリー
猟奇の主⑤



「もしもし、高石さん!」

「うん…。実は…」

「ケガね!ツメじゃあないの?人にやられたんでしょ!」

「ああ…。済まないけど、今日はキャンセルにして欲しい。それと、今回の件は下りる」

「ちょっと待って!誰にやられたの?これは明らかに犯罪よ。私と一緒に警察に行きましょう」

「いや、警察沙汰にはできない。それに今は何も言いたくないんだ」

「待ってよ!今回の私のパートナー、あなたに決めたのよ。私と一緒に危険な共演したいんじゃなかったの?」

「悪いが、気が変わったんだ。じゃあ…」

”プーッ…”

カレはあっさりと切った

何なのよ…、どうなってんのよ…


***


私は怒りとやるせなさ、誰かに振り回されてるであろう自分へのもどかしさが混ざり、心を取り乱してはいた

でも、肝心なところはしっかり押さえていたわ

ここで間をおかず、ヤツにメールだ!

どのみち明日、直に面と会うんだ、イカレたチョイデブヤロウには…

ここで逃す訳にはいかないって

ただ、会うまではジャブで通す…

この点は冷静に捉えていたわ


***


『テメー、またやったな!あんなマネ、二度も!いい加減、認めろよ、クズヤロウが!明日は絶対逃げんなよー!!』

まあ、文字的にはどうしても過激になっていたけど…

そして、ヤロウからの決まり文句”ノーコメント”は相変わらずだったが、私との”前夜”のリターンはやや”肉”がついていた

『オレの返事はブレない。”ノーコメント”。明日の変更もねーよ。そこではお前の知りたいこと、全部わかるようにしておく。では、せいぜい俺に抱かれる夢でヒイヒイ言ってろ』

何とふてぶてしいんだ!!


***


ここで私は”明日”を前にして、一旦頭を整理した

今現時点での事実確認を…

第一に、事実として、面接者4人のうち二人がリタイアした

今日、その内の一人が私の共演者に決定した高石トールとうことが明らかとなるに至り、”そのイス”は空席となった

そして必然的に、高石が放棄した私の共演者は、残りの二人…、つまり石渡と石神いずれかで再選考しなければならなくなった訳だ

ここまで整理したところで、私はふと気がついた

私の見立て通り、二人の爪剥がしの犯人がプー石渡だとしたら…

その目的の真意は何にせよ、残ったもう一人の面接者だってターゲットにしてる可能性は高い

石神さん…





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