研がれる私/長編エロティックミステリー
猟奇の主⑥



夜8時前…、私は気が付くとスマホを手にしていた

そして、迷わず石神康友の登録番号に発信したわよ


***


5回ほどの呼び出しでカレは着信してくれた

この瞬間の安ど感…

それは私…、長い間自覚したことない、純な反応だった…

何故か…


***


「もしもし…」

「ああ、オレだ。ルイだな?どうした?」

「ああ…、こんばんわ。あのう、いきなりだけど、今回の私の共演者候補、二人が何者かに爪を剥がされて…。面接結果の採否通知前日、私の共演を辞退してきたの、二人とも。だから…、念のため、あなたは無事かどうか確認したくて…」

「お前らしくないな。人生の大半を人の命を奪う時間に費やしたこのオレが、平和ボケしたこの国のトーシロにボコられるってか…。ありえねえーよ、はは…」

「そうよね…、はは…」

考えてみればその通りのようだが…

実際は違うでしょ…


***


「でもね…、あなたの言うことはごもっともで、輩が凶器をしこたま手にして何人がかりで襲ってきても、筋金入りのあなたが不覚を取ることはないでしょ。それは分かってる。要は襲われたのかどうかなの…」

「ない。今のところはだが…」

カレはきっぱりと言い切った

「なら、よかった。でも、気を付けてね」

「ルイ…。お前、爪剥がしの主、心当たりがあるんだな?」

「ええ。でも、その心当たり、あなたはもう察しがついてるんでしょ?」

「4人の面接者のもう一人だろう?」

「そうよ。あなたの住まいとそうは離れてないし、何しろ用心はして」

「ラジャーだ」

まあ、カレったら…(苦笑)


***


私たちは、”じゃあ明後日の夜、約束通り…”と確認し合って電話を切ったわ

何はともあれ、カレが無事で心の霧が晴れた思いだった

これで、明日に集中できるってもんよ

石渡カズヒコ…

明日はアンタのぜい肉をそっくり削いでやる

高いびきは覚悟してかけよ!


  



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