研がれる私/長編エロティックミステリー
猟奇の主⑦



翌日の朝は電話のコールで目が覚めた

「朝早くすいません。そちらのマンションの管理会社、××ハウジングの者です。ご依頼いただいておりました、エントランスの監視カメラご閲覧の件でお電話を…」

意外と速い管理会社の対応に感心し、私は眠い目をこすりながら、声優のような美声で感じのいい若い男の声に耳を傾けていた


***


結局今日、カメラの映像が見れるらしい

午前中の11時半に部屋で…

これは何ともグッドタイミングだ

今日の夜には、爪剥がしの第一容疑者であるプーと会う

そうろなればよ…

その時点では、生爪を私の部屋のポストへの入れたヤツが判明してるのだから、もしそれがプーなら、そこで話をつけられる

とにかく…、所詮座興に過ぎないバーチャルの延長で、人の爪まで剥がすような猟奇の主が、私の前に正体をさらすのは数時間後と迫ったのよ

私は年甲斐もなく、わくわく感を押さえるが容易ではなかったわ


***


管理会社の担当者は約束時間ぴったりに来た

私と同年代らしき風貌の若いその担当者をリビングに通すと、早速、分厚い鞄からモバイルとカメラのソフト素材を取り出してる…

「ではまず、ご依頼の内容についてご確認いただき、お間違いないようであれば、ここにごご署名をお願いします」

私は日時等を確認してサインをした

担当者はそれを受け取ると、早速モバイルをセットし、再生の準備に入った

さあ…、いよいよ不遜極まる猟奇の主をこの目で確かめる瞬間が迫って来たわ


***


「お客様のご指定の位置ですと、この画像の角度が一番鮮明だと思いますので、まずはこちらをご覧いただきます」

どこまでも感じよく手慣れた担当者は、モバイルの設定を完了させたようだ

「はい…。では、第一希望のご指定時間から再生します。目的の映像がすぐに映るとは限りませんので、早送りしますがよろしいですか?」

「ええ、それでお願いします」

「では…。声をかけてくれれば静止しますので…」

「はい…」

まずはあの日、ポストを開けた2時間前から再生を開始してもらった…


***


カメラの角度は理想的だった

当該位置からなら、603号室のポストに前に立てば、ホシの人間は全身丸写しだ

それをズームアップすれば、”犯人”のツラはしっかり拝める

果たしてまもなくココに現れるのは、第一容疑チョイデブか否か…

しっかり見届けてやる!






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