研がれる私/長編エロティックミステリー
猟奇の主⑧



”映写会”がスタートして、既に45分…

私がエントランスに出た3時間半前まで遡って再生しても、まだ”その瞬間”は映らなかった

つまり午前10時過ぎには、例のブツ入り封筒が投函されていたことになる

ということは…

前日夜の8時半に帰宅した時、ポストを確認して”生爪入り”などなかったのだから、”お届け”はその間となる…

要は人が寝てる時間帯って可能性も出てきた訳だ

仕方ない…、ここは持久戦覚悟よ


***


撮影映像は午前6時まできたが、いまだに犯人は登場してくれない

担当者は右手でマウスを握りながら、淡々とモバイルの画面に注視して黙ってはいるが、内心はさしずめ、”いい加減出てきてくれー”ってとこだろう


***


ついに午前4時半まで来た…

猟奇野郎め…

夜行性だったか


***


リビングのデジタル時計は午後2時を表示していた

あと4時間後には石渡と会う

”だいぶ時間も押してきたな”…、と、心の中で呟いた後…

”♪♪♪~”

寝室のデスクに置いてあったスマホが、着信を告げるメロディーを吐き出していた

「ちょっと、すいません…」

「ええ、どうぞ。画像、停めときますか?」

「いえ、そのまま早送りしててください」

私はそう言って寝室まで小走りし、スマホを右手ですくい上げた

その眼に入った発信元…

”…石渡!”

この瞬間、私の脳裏には複数の”光景”がまるでデジャブのように、連射でフラッシュバックした


***


「…もしもし、石渡さん?」

「ああ…。急だが、俺も今日はいけない」

「!!!」

私は当然、絶句となった






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