研がれる私/長編エロティックミステリー
残った男①



「あなた!まさか…」

「…ケガだ。細かく聞かれても答えねー。何しろ、アンタとの共演もヒモの申し出も降りる。こんな俺でもよう、無断キャンセルは気が引けたんで、ドタキャンの一報だけはな…」

脂肪付チョイデブのダサ系プー、石渡カズヒコのその声…

何と弱々しいのよ!

アンタは不敵で憎々しいからこそ、存在感を醸してるんでしょーが!


***


「石渡さん、答えてちょうだい!あなたの生ツメを剥がしたのは誰なの!」

「オレじゃないのは確実だろ。この後に及んで自作自演ってのは200%ない。なら、残るは一人だろ」

「!!!」

「…宮本さん!映ってますよ、午前2時55分だ…」

私のアタマが真っ白の最中…、リビングからは遅すぎたお呼びがかかった…


***


「…今いきますから、一時停止でお願いします!…石渡さん、私はあなたを最初から疑ってた。その容姿とかで先入観もあったわ。でも違った…。申し訳ないわ、あなたには」

「アンタにそんな口上、似合わない。それに、今みたいな甘い気持ちじゃあ、”これから”のストーリーは散々たるもんになるだろ。ファンをなくすぞ」

「石渡さん…、あなた…」

「いいか、これからでアンタの真価が決まる。本命男も及第点男も悲しむようなザマだけは晒すな。自信なきゃ、撤退した方が身のためだ。以上だ。じゃあ…」

”プーッ…”

プーさんは最後まナゾだった


***


でも…

カレがメールで確約した昨日のセリフ…

アレは完遂したと思う

”そこではお前の知りたいこと、全部わかるようにしておく…”

あなたによって、たった今、概ねが”私の中”に入ったわ

それは、バーチャルとリアルをワープさせていた私たちの、本当の行先になるのね…

戯言じゃあ済まない…

この時…、漠然とだが、やっとそのことに気付いたわ





< 37 / 127 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop