研がれる私/長編エロティックミステリー
残った男③



管理会社の担当者が帰ったのは午後3時近かった

今夜の”予定”がドタキャンとなった限り、今、私は何をすべきか…

通常で考えれば、一階のエントランス自室ポストを確認し、3人目の爪入り封筒が投函されているかの確認だろう

だが、私はそれをスルーした

あえて…

3通目はポストには届かない

私はそう読んでいた


***


その見立てたとしたからには、私がすべきは、”今現在”を事実として正確に把握することだ

あくまで客観的に

ここは一旦、諸々の推測は極力抜きにして

となれば…


***


まず以っては、私の恋人を一緒に殺す”共犯者役”に選んだ高石の脱落で、その”役”が空位となったことだ

しかもエントリー面接者4人のうち、高石を除く二人が彼と同様の事由により、私との共演そのものを辞退してきた

これによって、私の共演者候補は石神康友一人となった

そして、石神が他の3人の生爪を剥ぐという猟奇的犯行に及んだ

このことはまだ立証には至っていないが、監視カメラの検証でほぼ100%アイツの仕業よ

もっとも単独とは限らない

これらを繋ぎ合わせれば、その凶行で3人から共演者辞退を迫り言質をとった…

これは実際には推測になるが、石渡の証言でほぼ間違いはないだろう

まずは、ここまでを押さえておくことが重要だ


***


2番目に、3人のリアクション

高石と石橋はほとんどと言っていいくらい、”ケガ”については何も口にしなかった

また、その二人からは、何故か怯えているという感じは、それほどまでには伝わらなかった

むしろ、理不尽極まりない行為に対して、一種の許容姿勢を自らに強いるやるせなさ、いらだちをいったものが感じとれた

そんな気がするの

何となくだが…

いや、いけない…

今は余分な憶測を排除して、今ここに並んだ”事実”を認識するんだったわ





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