研がれる私/長編エロティックミステリー
残った男④



もっとも注目すべき事実…

それはこの二人に対し、3番目に爪を剥がされた石渡は、”そうではなかった”ことだ

エキセントリック極まっていたプー石渡は、これまで私に何かにつけて”ノーコメント”を突き付けてきた

ところが今日の電話で一変していた

”生爪後”のプーの口からは、まるで別人のように結構ベラベラだったのよ

しかも私のもっとも知りたい”核心”には、あっけないほど、ズバリ答えてもいた

そしてもう一つの事実…

ヤツの昨夜のメールには、”…(明日会ったら)お前の知りたいこと、全部わかるようにしておく”と、あった

これは推測に及ぶが、自分が口にする(予定の?)”フルコメント”に向けた伏線と解せなくもない


***


更に…、今さっき判明した極めつけの事実は、監視カメラが捉えた人物だ

もうこれは、面接者4人のうち残る男、石垣康友に間違いはなく、加えて、少なくとも一人の生爪を私に届けた張本人だってことも歴然の事実となる

それら”事実”をズラッと列挙したところで、一つの疑問が浮上した

そうよ…、ほぼ確定した石神による3人への一連の凶行…

これって、この3人が今回私の共演者候補であったということを知り得なければ、そもそも接触すらできない

だが、カレにはそれが出来た

その何故かの推測は留めるとしてもよ…、少なくとも、それがわかれば本犯行に及んだ動機・背景・裏事情も芋づる式に露わになる可能性を孕んでるってこと…

これは言えてると思う


***


従って、要は明日がすべてということになる

きっと明日の夜8時、カレの指定場所”ジャンク”で石神康友に会えば、おそらくおぼろげな”全体図”は私の眼前に曝されるだろう

その夜…、俄然クローズアップされてきた”殺しのスペシャリスト”は、私の思考を占領していた…





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