研がれる私/長編エロティックミステリー
残った男⑥



サパーラウンジ”ジャンク”には8時5分前についた

その店ジャンクは、2階建てテナントの1階で、外観はイタリアンレストラン風だった

ドアを開けると店内は一望できたわ

”いらっしゃいませ…”

「ああ、待ち合わせです」

「宮本様ですか?」

「はい…」

「奥の席でお待ちです。では、どうぞ…」

カレはすでに到着しているようだ…


***


若くて感じの良い男性店員の先導で、一番奥のテーブルに案内されると、カレはいた

「よう!時間ぴったりだな」

石神は右手を上げ、軽く笑みを浮かべていた

今日のカレ、黒で統一してる…

外見は真っ黒だ…

なら、”その中”はどうなのか…、確かめてやる!

***


「横に座れ。ここだ」

カレは自分の座っているソファーの横をポンポンと叩いてる

正面にも椅子があるが、ここは指示通り、彼の左隣に腰を下ろすことにした


***


私は意識して口を閉ざしていたわ

まずはカレの出方を見る

すべてはそれからだ…


***


この場に及んでの私は、既に腹が据わっていたし、今日は”決着”するつもりだったから、通り一遍な挨拶はカットとした

「…あのストーリーでの宮本ルイはカンが鋭かった。どうやら、ホンモノも感性はピタピカらしいな。…でよう、今日は概ね”承知”ってことで来たんだな?」

「オフのコースよ。今日ここ来る前、マンションエントランスの監視カメラをチェックしたわ。でね…、不遜の輩はしっかりこの目で確認した。さあ、私は何から喋ればいいのかな?」

「…そうか。でもまあ、ここは、とにかくオレの採否結果だろう。それが今日の目的だったんだなし…」

カレは軽くジャブをかましてきた…

そういうことならいいわ

行くわよ


***


「私の共演者には、一番最初に面談した高石トールという医療関係の仕事についてる男に内定していたわ。でも、結果通知で会う直前、辞退してきた。ある理由で。他の二人も同じ理由で私とのパートナーシップは下りると申し出てきた。雪崩を打ってね。いずれも、結果通知の当日ないしは前日に、突然よ」

「…」

既に石神の眼光は鋭く光っていた

「要するに、私は共演者エントリー4人のうち、3人にトンズラされて、パートナー役は現在空席。で…、面接者の内、残った一人はあなたってこと。この現状、私はどう解釈すればいいのか…。そこが明確にならないと、あなたへの採用可否を通告できないわ」

私は早くも”残った最後の男”を挑発してた…





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