研がれる私/長編エロティックミステリー
恋人役、決す!⑤



「…なら、こっちから答えよう。面接官さん、オレのようなもんに1100分の1の幸運、ありがとう。この際、是非アンタの”相手役”ゲットさせてくれ。きっと刺激的ないい作品になるぜ、フフ…」

「じゃあ、私からも…。それ、一体どっちの”相手役”ってこと?」

私は思わずオウム返しをしていた

「…」

「答えなさいよ、どうなのよ!」

だが石神康友は、なんら動揺の表情など見せていなかったわ


***


「…オレたちは共に重度の刺激中毒者だろう?より刺激的なストーリーにしたいって共通願望は共有してると思ったが…。違うのか?」

ここにきて、カレは平静かつ毅然として私に対峙して来ている

そう言うことね…

カレは最初から、”そのつもり”で仕掛けたのよ

すべては刺激的展開の下地として…

面接エントリーの競争相手から生爪剥ぐ演出も、ダブルキャスティングの自作自演も…

ここで私は悟った

私は石神康友の手のひらに乗っかった

ポンと…

その手ごたえを、おそらくカレは感じてることだろう…


***


「じゃあ、認めるのね?あなた、3人の生爪剥いで私の”協力者役”の競合相手を辞退させた上で、まずはその役を得る。その後、私に恋人役の募集を進言し、あなたは”それ”にも白々しく立候補した。この”一連”、最初から”そのつもり”だったってことを!」

「認める。…付け加えれば、その結果も読み込んでいた。お前はオレを採用するだろうとな…。まあ、1100分の1なんて難関を突破できるとは、さすがに驚きだったが…(笑)。もっともお前は、オレのことを”選んだ”というよりも、二役をオレに突き付ける目的だったんだろう?」

「あたりまえでしょ!私の恋人を殺す協力者役に決定していた石神康友が、今度は自分が命を狙う当事者の役まで演じるって、要は二役やる気なのってことになるわよね?」

私はここではっきりと質したのだが…

カレは私の反応を面白がっているようだった





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