研がれる私/長編エロティックミステリー

第5章ー解禁ー

相互殺意①



次の”ステップ”は明らかだった

石神康友が私の協力者から殺意を抱く恋人にスライドしたことによって、空席となった共演ワクの穴埋めだ

「さて…、こうなると、恋人であるあなたを一緒に殺害する私の共犯役をどうするかになるわね。危険な共演者さんは、”その辺”も最初から想定済なんじゃあないの?」

私はあえてカマをかけてみた

カレは私に向けたままの視線をそらさずに、グラスのマティーニを飲み干してから答えたわ

この時…、僅かながら、カレの眼光が今までより一段鋭く光ったのを、私は見逃さなかったわ


***


「ルイ…、今決まったお前の恋人役は、殺しの熟練者だ。当然、そのことをお前は承知している。これが本ストーリーの基本設定になるよな。なら、お前がどんな奴を共犯に抱き込んで、その手ごわい”恋人役”をどのようように殺害しようとするか…。それ次第で作品の盛り上がり度が左右する。言うまでもないわな、これ…(薄笑)」

カレの口調は私に突き付けるようだった


***


この男の言わんとするところは明確だったわ

私たち二人がこれから織りなす危険なイカレた物語は、相互殺意の元、果たしてどっちが愛する相手の命を奪ことになるのか…

その結末の行方が最大の焦点となっていく

だが、カレの誘導せんとするストーリー展開の軸足は、自分が”演じる”元特殊工作隊の傭兵が、恋人と共犯者による企てをいかに撥ね退けるか…

そこに持って行ってる


***


従って、彼の言うモンスポ連中を夢中にさせるような、刺激的な”作品”に達するかどうかは、私の共犯者、そしてその手口にかかっていると言ってもいい

ってことで、”ルイ、とびっきぴのパートナーを選んで、オレに向かってこい”とね…

石神はそう私にメッセージを発信してる訳よ


***


「…そうね。命を奪う相手が生半可な男じゃなくなったんだもの…。よっぽどのパートナーに共演願わないと、到底敵わないわね」

「そう言うことだ。通り一遍の相棒でオレに挑んだんじゃあ、あくびの出る駄作になっちまう。そんなモンをアップしても意味ねーよ。お前もオレも、サイトのスポンサーどもにもな」

要は共犯者役のキャスティングが、”本作品”の究極度をどこまで現出できるかのカギを握ってるということか…

そして、いかなる殺しの手段を講じるか…

いずれにしても、結論は明確になったわ






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