研がれる私/長編エロティックミステリー
ブラックな遊戯④



カレの今の言葉で、私の推測はビンゴだろう

そう結論に達した瞬間、清潔感溢れる明るく小奇麗な部屋は、とたんにどんよりした色調に一変した感じがした

私は一気に厭世気分に陥ったのだった…

だって、当然でしょう…

アレ…

カレが”手にかけた”女性たちよ…!


***


「…察し通りさ、ルイ。間近かで見てみろよ」

私の顔色が変わったのを、康友は見逃さなかったようね

私は無言でソファから立ち上がると、3、4M程離れたソレが集ってる場所へ歩を進めたわ

ちょっと、足取りは重々しかったと思うが

そして私の両の瞳にズームアップされて映ったモノ…

ざっと数えて10人の若い女…、それは様々な国の若い女性の写真…

ちなみにそのすべてが、”いわゆる定番の”笑顔だった

「壁の写真は一目瞭然だ。オレがこの手で殺めた女たち…。皆、外国人だが…」

カレは私のすぐ隣で、まずはさらりと解説してくれた

問題はその次よ…


***


私が目線をリビングチェストが背にするカベからその手前下…、つまりおよそ高さ80センチに位置したチェストの天板に移すと、数秒の間をおき、カレが再び解説してくれたわ

「…その瓶に入ってるのは遺品さ。まあ、髪の毛だ。厳密には彼女たちが息を引きった後…、いや、ごく直後に生の湯気がたってる状態で切断、採取した頭髪になる」

カレの明瞭かつ生々しい説明は、淡々とした口調で私へ報告するようだったけど!

「!!!」

さすがに言葉が出ないって…

まやかしがとシビアなリアルとがどうしようもなくコンフュージョンして、正視のマトが定まらない…

そんな自分の混沌を真正面で捉えることは、さすがにしんどくて、素の女とすればこの絵面は残酷すぎる

***


それでも、その遺品の詰め込まれたビンの群れに視線が停止したままだったわ、私…

釘付けといっても相違なかった」

この間、数十秒…

そんな私の表情にへ横から射るように突き刺さる石神康友の視線…

それはまるで息が吹きかかってくるような、ヌメッとした触感だった

だが…

その数秒後、気が付くとカレは私の真後ろに移っていた

瞬間移動…⁉

大げさだがそんな形容しか思い浮かばない

そして、さらに!

カレは私の体に背後からぴたりとその身を密着させていた…






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