この愛に猛る!

この愛に猛る/その24

この愛に猛る/その24
剣崎



「…本日の婚約披露パーティーも、そろそろ終焉に近づいてまいりました。ここで、主催者様側を代表して…」

さあ、明石田の叔父貴がスピーチ台に向かったぞ

「それでは、明石田様、よろしくお願いいたします…」

場内からの盛大な拍手を受け、マイクを前にした紋服袴姿の叔父貴は実に映えていたよ

列席者全員、その叔父貴に熱い視線を送っているのがひしひし伝わる

さすが、すごい貫禄だ

俺は改めて、この人の人を惹きつけるオーラをまざまざと見せつけられた



極道としては規格外のはみ出し者だった、あまりに破天荒な相馬会長を数十年の長きにわたり見事にコントロールしてきたその手腕…

伊豆の叔父貴が相馬会長に寄り添ってくれていなかったら、相馬さんはとっくに潰されていただろうし、今の相和会はなかった

そのことを、ここにいる業界関係者はよく知っている

故にこの人には誰もが一目を置き、西の主だった人達は極めて特別な礼を尽くしていた

誰の干渉も受けず己の思うまま獣のように生きた、稀代のイカレ者が唯一耳を傾けるただ一人の”兄弟”であった明石田さんには、ある意味ここにいる西の御仁たちは感謝している

それは、叔父貴がこれまで一貫して、関東より肌の合う関西と好意的な姿勢を保ち続けてきたことで培われた信頼関係による

ふふ、その叔父貴の今日ここでの言葉は、かつてない鮮烈なメッセージとなって彼らの心に突き刺さるだろうよ


...


「…皆さん、本日は万障繰り合わせいただき、遠路よりお越しくださって、誠にありがとう。まずは主催者を代表して御礼申し上げたい」

パチパチパチ…

叔父貴は拍手が鳴りやむまで、お辞儀を続けていた

「…本来なら、相和会のトップがここでご挨拶を申し上げるのが筋ですわ。だが、相和会では相馬豹一が存命中からずっと、このような席での皆さんへの手向けのマイクを握るのは、いっつもわたくしでしたわ。ここにいる諸氏はよくご存知ですな」

”アハハハ…”(一同爆笑)

”明石田さん、いつもご苦労じゃったです‼”

”伊豆の親分、今日もぜひ名スピーチを聞かせてくださいー!”

よし、いいムードだ


...


「…この度、3代目に就任した矢島も口下手なもんで…、勝手に挨拶は”伊豆”にってことになってましたわ。…まあ、相和会はそういう常識はずれの集団ですので、ひとつ寛容にお願いくだされ」

ここでも割れんばかりの拍手が鳴り響いた

「…まず、今般における相和会跡目相続のごたごたでは、大変お騒がせいたしました。この場を借り、皆様方に陳謝申し上げる」

叔父貴はまた深々と頭を下げた

俺はふと、麻衣の様子を覗っていた

ヤツは無表情で叔父貴と周囲を何度も目で往復させていた

それは鋭い眼光だったよ



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