この愛に猛る!
この愛に猛る/その7
この愛に猛る/その7
アキラ
「ケイコの母です。娘がお世話になってて、ご迷惑かけてますね。まあ、頭は上げて…」
ふう…、一応、挨拶を済ませた…
もう、心臓はバクバクし、背中には汗がにじんでるし、やっぱりすごく緊張してる
...
「…うちは主人が海外赴任しているので、今日あなた方が来たら、私から良く話を聞くように言われています。じゃあ、それは最初に済ませましょう。美咲、その間、2階に行ってなさい」
美咲ちゃんは「うん」と頷いて、階段を上がって行った
「ケイコもちょっとはずしてちょうだい。まず、香月さんにお聞きすることがあるから、終わったら呼ぶわ。それから3人でお話ししましょう」
「わかった。部屋に行ってるよ。終わったら声かけて…」
ケイコちゃんは手を振りながら。ちょっと笑って会釈し、2階の自分の部屋に向かった
「じゃあ、香月さん、こちらの和室へどうぞ」
お母さんは、廊下を挟んだ和室に先導してくれた
...
「さあ、ここにかけてください…」
「はい…」
オレは部屋の奥の出窓側に座った
お母さんはその右横、テレビの脇に腰を下ろした
さあ、いよいよだ…
しかし、お母さんと顔を合わせると、また緊張で心臓がドキドキしてきた
「…香月さん、初めにこれだけは言っておきます。ケイコの親って立場では、あなたとあの子の関係を、認める訳にはいかないんです。理由は言うまでもないわよね。それは、あなたも承知していると思う」
「はい。ケイコさんのご両親であれば、僕を許せないのは当然だと思います。本当にご迷惑をおかけしました」
ここでまた頭を下げた
...
「…正直、こうしてお目にかかると、あなたが考えていたような悪い人には見えないわ。でも、警察でああいう結論となれば、それを受け入れるしかないもの。だから、実際はケイコが薬物の犯罪で逮捕されたことが、全部あなたのせいではないとしても、あの子の親としては、あなたとケイコには別れてもらいたい。主人も私もそういう気持ちよ」
表情は穏やかだが、お母さんからはきっぱりと断言された
「…今日は美咲に説得されて二人を招いたけど、あなたと離れられないなら、ケイコは家に戻しません。これは、はっきり言っときます。いいですね?」
「はい。自分もその覚悟で、彼女を心から愛しています。ご両親には申し訳ない気持ちでいっぱいです。でもその上で、僕たち、別れる気はありません。すいません…」
「…」
お母さんは俺の目をじっと見つめて、黙っていた
...
「香月さん…、親バカかも知れないけど、ケイコは奔放すぎるところはあっても、人様に後ろ指を指されるような曲がったことは絶対しない子です。高校を退学させられるなんて、夢にも思わなかったわ。あなたに出会わなかったら、こんなことにはならなかったって思えてしまうのよ、親としては。どうしても…。それで、ひとつだけ聞かせてもらいたいの。…あなた、ケイコとはいつ知り合ったの?」
参った…
これを正直に言ったら、警察での供述と矛盾しちゃう
ひょっとして、お母さんは、そのことを確かめようとしてるのだろうか…
...
オレはすぐに答えられなかった
事前に”これ”を聞かれる想定はなかったんだ
どうしよう…
お母さんはオレの目から視線を外さない
「あのう…、ケイコさんからは聞いていませんか?」
「ええ、聞いてないわ」
お母さんはさらりと答えた
「…今年の7月に千葉の海で出会ったんです。その後すぐ、例のライブハウスで再会しました。僕は、そこの専属バンドのメンバーだったんです。でも、以前にも会っていたようなんです。二人きりだけではない場で…」
オレは咄嗟だが、かなり微妙な返答をしていた
「そう…。私からも話しておくと、ケイコがガラの悪い連中と付き合いだしたのは、去年の夏頃からなのよ。高校に入って間もなくだったわ。もっとも、あの子は見た目には、決して不良には染まっていなかった。…学校の先生とも相談して当面、見守ろうということになったわ。だから、あの子への”心配の芽”は、あなたに出会う前からという面もあるとは思っています」
このお母さんから感じたのは、とても深慮を備えてる人なんだなってことだった
その娘のケイコちゃんがなぜ、あれほどフェアでピュアなのかが納得できた気がしたよ
...
「まあ、あなたとはこの辺にしましょう。今、ケイコを呼んできますから、楽にしてて下さい」
なんとか、サシでの面談は乗り切ったかな…
ありふれた表現になるが、いいお母さんだよ
間もなくケイコちゃんが2階から降りてきて、オレの左隣に座ってね
二人は顔を合わせると、ちょっとクスって自然と笑顔になっちゃった
アキラ
「ケイコの母です。娘がお世話になってて、ご迷惑かけてますね。まあ、頭は上げて…」
ふう…、一応、挨拶を済ませた…
もう、心臓はバクバクし、背中には汗がにじんでるし、やっぱりすごく緊張してる
...
「…うちは主人が海外赴任しているので、今日あなた方が来たら、私から良く話を聞くように言われています。じゃあ、それは最初に済ませましょう。美咲、その間、2階に行ってなさい」
美咲ちゃんは「うん」と頷いて、階段を上がって行った
「ケイコもちょっとはずしてちょうだい。まず、香月さんにお聞きすることがあるから、終わったら呼ぶわ。それから3人でお話ししましょう」
「わかった。部屋に行ってるよ。終わったら声かけて…」
ケイコちゃんは手を振りながら。ちょっと笑って会釈し、2階の自分の部屋に向かった
「じゃあ、香月さん、こちらの和室へどうぞ」
お母さんは、廊下を挟んだ和室に先導してくれた
...
「さあ、ここにかけてください…」
「はい…」
オレは部屋の奥の出窓側に座った
お母さんはその右横、テレビの脇に腰を下ろした
さあ、いよいよだ…
しかし、お母さんと顔を合わせると、また緊張で心臓がドキドキしてきた
「…香月さん、初めにこれだけは言っておきます。ケイコの親って立場では、あなたとあの子の関係を、認める訳にはいかないんです。理由は言うまでもないわよね。それは、あなたも承知していると思う」
「はい。ケイコさんのご両親であれば、僕を許せないのは当然だと思います。本当にご迷惑をおかけしました」
ここでまた頭を下げた
...
「…正直、こうしてお目にかかると、あなたが考えていたような悪い人には見えないわ。でも、警察でああいう結論となれば、それを受け入れるしかないもの。だから、実際はケイコが薬物の犯罪で逮捕されたことが、全部あなたのせいではないとしても、あの子の親としては、あなたとケイコには別れてもらいたい。主人も私もそういう気持ちよ」
表情は穏やかだが、お母さんからはきっぱりと断言された
「…今日は美咲に説得されて二人を招いたけど、あなたと離れられないなら、ケイコは家に戻しません。これは、はっきり言っときます。いいですね?」
「はい。自分もその覚悟で、彼女を心から愛しています。ご両親には申し訳ない気持ちでいっぱいです。でもその上で、僕たち、別れる気はありません。すいません…」
「…」
お母さんは俺の目をじっと見つめて、黙っていた
...
「香月さん…、親バカかも知れないけど、ケイコは奔放すぎるところはあっても、人様に後ろ指を指されるような曲がったことは絶対しない子です。高校を退学させられるなんて、夢にも思わなかったわ。あなたに出会わなかったら、こんなことにはならなかったって思えてしまうのよ、親としては。どうしても…。それで、ひとつだけ聞かせてもらいたいの。…あなた、ケイコとはいつ知り合ったの?」
参った…
これを正直に言ったら、警察での供述と矛盾しちゃう
ひょっとして、お母さんは、そのことを確かめようとしてるのだろうか…
...
オレはすぐに答えられなかった
事前に”これ”を聞かれる想定はなかったんだ
どうしよう…
お母さんはオレの目から視線を外さない
「あのう…、ケイコさんからは聞いていませんか?」
「ええ、聞いてないわ」
お母さんはさらりと答えた
「…今年の7月に千葉の海で出会ったんです。その後すぐ、例のライブハウスで再会しました。僕は、そこの専属バンドのメンバーだったんです。でも、以前にも会っていたようなんです。二人きりだけではない場で…」
オレは咄嗟だが、かなり微妙な返答をしていた
「そう…。私からも話しておくと、ケイコがガラの悪い連中と付き合いだしたのは、去年の夏頃からなのよ。高校に入って間もなくだったわ。もっとも、あの子は見た目には、決して不良には染まっていなかった。…学校の先生とも相談して当面、見守ろうということになったわ。だから、あの子への”心配の芽”は、あなたに出会う前からという面もあるとは思っています」
このお母さんから感じたのは、とても深慮を備えてる人なんだなってことだった
その娘のケイコちゃんがなぜ、あれほどフェアでピュアなのかが納得できた気がしたよ
...
「まあ、あなたとはこの辺にしましょう。今、ケイコを呼んできますから、楽にしてて下さい」
なんとか、サシでの面談は乗り切ったかな…
ありふれた表現になるが、いいお母さんだよ
間もなくケイコちゃんが2階から降りてきて、オレの左隣に座ってね
二人は顔を合わせると、ちょっとクスって自然と笑顔になっちゃった