この愛に猛る!
この愛に猛る/その8
この愛に猛る/その8
ケイコ
「…ケイコ、今、香月さんにも話したけど、お父さんとお母さんはね、あなたがこの人と別れない限り、家に戻す気はないわ。今日はあくまで特別よ。香月さんは承知したわ。…あなたとは別れる気はないそうだから。ケイコも同じ気持ちなのか、聞かせてちょうだい」
「はい。アキラとは一緒に生きていきます。勝手ばかり言ってごめんなさい、お母さん…」
「…」
母は無言で、しばらく私の目を見ていた
そして、ふうってタメ息を吐いた後…
「…仕方ないわね。お父さんには今の二人の気持ち、伝えておくわ。あと、香月さんのご両親にもお会いして、ちゃんとお話ししておくのよ」
「うん。たぶん来月、山梨の実家に二人で行ってくるよ」
一応、母にはアキラのお父さんがもう亡くなってることは言っておいた
「じゃあ、この話はこれで終わりにしましょう。…ケイコ、17歳のお誕生日おめでとう…」
お母さん…
...
その後、美咲も2階の部屋から降りてきて、4人での誕生祝いが始まった
私の目の前には大きなケーキが置かれ、ロウソク17本に火が灯された
ロウソクの火を勢いよく吹き消すと、3人からは拍手とお祝いの言葉をいただいた
さらに、お母さんと美咲からは、ペアのマフラーをプレゼントしてもらってね
ごく定番のささやかな誕生祝いだけど、言葉には表せないほど嬉しかった
感激だよ…
一生忘れられないって
...
その後、4人で食事をしながら、和やかな雰囲気で会話が弾んでね
ひと通りの世間話をして、しばらくすると、自然に家族や兄弟の話になって…
で…、アキラの方は年の離れたお兄さんと二人兄弟で、ここ数年会っていないとか、そんな話から横田家には死んだ長男がいたって流れになった
「…じゃあ、お姉ちゃん、”恵子”が”競子”になった理由は、アキラさんにはまだ話してなかったの?」
アキラには死んだ兄がいたことだけで、”あの”命名にまつわるエピソードまでは言ってなかったんだよね
そこで母と美咲が、その経緯を話し始めたわ
...
「…この子が無事生まれて、女の子なら”恵子”とあらかじめ決めていたとはいえ、”恵一”の件があったから、やはり名前を付ける際は気になって姓名判断を受けたの。そしたら、”恵子”はあまり運勢がよくないと言われたわ。それで、何故その名前にこだわるか事情を告げたら、それなら、違う漢字で”ケイコ”という呼び名を残したらどうかって提案されたわ」
「お母さんたち、数週間しか生きられなかった恵一お兄ちゃんの分まで生きてもらいたいって願いと、二人で力を合わせて生きる兄妹であって欲しかったという思いがあったんだって。それで、姓名判断の人は、”競”という字を選んだらしいんですよ」
「…互いに競い合いながらも、同じ字のつくりが並んでるから、共に協力し合う願いも込められるんじゃないかって、勧めてくれて。そう言われてこの漢字をよく見ると、視覚的にはいかにも二人並んで元気に生きてるってイメージがしてねえ…、その場で”競子”にしようって決めたの(笑)」
「そうですか…。なんか、いい話ですね」
アキラは目を細めていた
「アキラさん、小学校で名前の由来を作文にした授業があってね、お姉ちゃんの話がクラスで1位になったんですよ。ちなみに、私の名前の作文も1位でした。はは…」
「そうだろうね、いい話だもん。でも凄いな、姉妹そろって…。じゃあ、美咲ちゃんの名前の由来は…?」
ハハハ…、アキラに尋ねられた美咲、お隣だった高原家が絡む”例の話”を始めたわ
...
「…ここがケイコちゃんの部屋か…。なんか健康な感じがするなあ」
いやあ、テツヤと同じこと言ってるよ、アキラも(苦笑)
「…なんか、冬物はかさばるね…。これもこれもって言ってたら大荷物になっちゃうわ。もう少し選別するかな」
「でもせっかくだから、なるべく多く持って行った方がいいよ。大きい紙袋に入れればだいぶ違うし。まあ、バイクだから限度はあるか。はは…」
アキラに手伝ってもらい、アパートに持帰る荷物としばし格闘してたわ(笑)
...
「…お母さん、今日はありがとう。お父さんにもよろしく言ってね」
「ええ。あなたも体に気を付けて、頑張りなさい」
楽しいひと時はあっという間に過ぎ去り、午後2時半、玄関前で別れの言葉を交わしている
「香月さん、ケイコを頼みますよ」
「はい…。今日は二人を迎えていただき、ありがとうございました」
「お姉ちゃん、アキラさん、またね」
お母さんたちは門の外まで出てきて、見送ってくれた
ああ、ジョンもワンワンとお別れしてくれてるし…
我が家を去る私の背には、”家族”の視線が優しく射していた気がした
ケイコ
「…ケイコ、今、香月さんにも話したけど、お父さんとお母さんはね、あなたがこの人と別れない限り、家に戻す気はないわ。今日はあくまで特別よ。香月さんは承知したわ。…あなたとは別れる気はないそうだから。ケイコも同じ気持ちなのか、聞かせてちょうだい」
「はい。アキラとは一緒に生きていきます。勝手ばかり言ってごめんなさい、お母さん…」
「…」
母は無言で、しばらく私の目を見ていた
そして、ふうってタメ息を吐いた後…
「…仕方ないわね。お父さんには今の二人の気持ち、伝えておくわ。あと、香月さんのご両親にもお会いして、ちゃんとお話ししておくのよ」
「うん。たぶん来月、山梨の実家に二人で行ってくるよ」
一応、母にはアキラのお父さんがもう亡くなってることは言っておいた
「じゃあ、この話はこれで終わりにしましょう。…ケイコ、17歳のお誕生日おめでとう…」
お母さん…
...
その後、美咲も2階の部屋から降りてきて、4人での誕生祝いが始まった
私の目の前には大きなケーキが置かれ、ロウソク17本に火が灯された
ロウソクの火を勢いよく吹き消すと、3人からは拍手とお祝いの言葉をいただいた
さらに、お母さんと美咲からは、ペアのマフラーをプレゼントしてもらってね
ごく定番のささやかな誕生祝いだけど、言葉には表せないほど嬉しかった
感激だよ…
一生忘れられないって
...
その後、4人で食事をしながら、和やかな雰囲気で会話が弾んでね
ひと通りの世間話をして、しばらくすると、自然に家族や兄弟の話になって…
で…、アキラの方は年の離れたお兄さんと二人兄弟で、ここ数年会っていないとか、そんな話から横田家には死んだ長男がいたって流れになった
「…じゃあ、お姉ちゃん、”恵子”が”競子”になった理由は、アキラさんにはまだ話してなかったの?」
アキラには死んだ兄がいたことだけで、”あの”命名にまつわるエピソードまでは言ってなかったんだよね
そこで母と美咲が、その経緯を話し始めたわ
...
「…この子が無事生まれて、女の子なら”恵子”とあらかじめ決めていたとはいえ、”恵一”の件があったから、やはり名前を付ける際は気になって姓名判断を受けたの。そしたら、”恵子”はあまり運勢がよくないと言われたわ。それで、何故その名前にこだわるか事情を告げたら、それなら、違う漢字で”ケイコ”という呼び名を残したらどうかって提案されたわ」
「お母さんたち、数週間しか生きられなかった恵一お兄ちゃんの分まで生きてもらいたいって願いと、二人で力を合わせて生きる兄妹であって欲しかったという思いがあったんだって。それで、姓名判断の人は、”競”という字を選んだらしいんですよ」
「…互いに競い合いながらも、同じ字のつくりが並んでるから、共に協力し合う願いも込められるんじゃないかって、勧めてくれて。そう言われてこの漢字をよく見ると、視覚的にはいかにも二人並んで元気に生きてるってイメージがしてねえ…、その場で”競子”にしようって決めたの(笑)」
「そうですか…。なんか、いい話ですね」
アキラは目を細めていた
「アキラさん、小学校で名前の由来を作文にした授業があってね、お姉ちゃんの話がクラスで1位になったんですよ。ちなみに、私の名前の作文も1位でした。はは…」
「そうだろうね、いい話だもん。でも凄いな、姉妹そろって…。じゃあ、美咲ちゃんの名前の由来は…?」
ハハハ…、アキラに尋ねられた美咲、お隣だった高原家が絡む”例の話”を始めたわ
...
「…ここがケイコちゃんの部屋か…。なんか健康な感じがするなあ」
いやあ、テツヤと同じこと言ってるよ、アキラも(苦笑)
「…なんか、冬物はかさばるね…。これもこれもって言ってたら大荷物になっちゃうわ。もう少し選別するかな」
「でもせっかくだから、なるべく多く持って行った方がいいよ。大きい紙袋に入れればだいぶ違うし。まあ、バイクだから限度はあるか。はは…」
アキラに手伝ってもらい、アパートに持帰る荷物としばし格闘してたわ(笑)
...
「…お母さん、今日はありがとう。お父さんにもよろしく言ってね」
「ええ。あなたも体に気を付けて、頑張りなさい」
楽しいひと時はあっという間に過ぎ去り、午後2時半、玄関前で別れの言葉を交わしている
「香月さん、ケイコを頼みますよ」
「はい…。今日は二人を迎えていただき、ありがとうございました」
「お姉ちゃん、アキラさん、またね」
お母さんたちは門の外まで出てきて、見送ってくれた
ああ、ジョンもワンワンとお別れしてくれてるし…
我が家を去る私の背には、”家族”の視線が優しく射していた気がした