逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~
逆転するとき
歩道虚まで歩いてきた純也は、見覚えのある姿に足を止めた。
「あの人…麗人が好きな人だ…」
そう。
純也が目にしたのは麗人(優衣里)の姿だった。
一度家に帰ったのか、清楚なブルーのワンピース姿で長い髪を綺麗に後ろでまとめている姿は、見ているだけで息を呑むくらい綺麗な姿である。
「あの…」
純也が声をかけると、麗人は振り向いた。
「すみません、突然声をかけてしまって」
「いいえ」
へぇー。
純也ってこんな真面目な目をする時あるんだ。
麗人はとても生真面目な目をしている純也を見ると、ちょっと笑えてきた。
「俺、沙原麗人の双子の弟で九条純也と言います。似ていないと思いますが、俺は産まれてすぐ母の親族に養子に行ったので苗字が違うだけです」
「そうなのですね。私は、伊集院優衣里と申します。麗人さんとは同僚で、今は同じ部署の部下です」
ニコッと笑った麗人を見て、純也はじっと何かを見抜いたような目で見つめて来た。
なんだ? どうして、そんなに見つめているんだ? 嫌だなぁ…なんか、心の中を見透かされているよな気分になるんだよな、この目を向けられると。
ちょっと困ったような目を浮かべ、麗人はそっと視線を反らした。
「伊集院さんって、麗人と同じ表情をするのですね。今みたいに笑う表情は、麗人も同じ表情をする時があって。そんな時は、何かを内に秘めている時なんです」
「そ、そうですか…」
やっぱり何か見抜かれたか?
昔から純也は、なんか感が鋭いからなぁ…。
「あの…もしかして…」
え? なに?
ちょっとギクッとして麗人が純也を見た時。
「おい! 俺の女に手を出すな! 」
グイッと純也の方を掴んできたのは、文彦だった。
はぁ? と、驚いている純也の襟首をつかんだ文彦は、すごい怒りの形相で睨みつけた。
「てめー! 俺の女横取りしやがって! 優衣里は、俺が先に結婚するって決めてたんだよ! 」
「何を言っているんですか? 」
「とぼけんじゃねぇよ! 正体隠して、すました顔して人の話コソコソと動画とって。挙句には婚約破棄までさせやがって、テメー何様なんだよ! 」
グイッと純也の首を締め上げて行く文彦は、怒りに身を任せて逆上した目をしていた。