逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~

「お前、萩野とは社内で堂々といちゃついて。仕事中に、ホテルにまで行っていたそうじゃねぇか! それなら、いっそ萩野と結婚しな! 二度と近づくんじゃねぇよ! 」

 怒りの形相で睨みつけている文彦に、麗人は怯むことなく歩み寄って行った。

「いいか? よーく覚えておけ! 」
 
 文彦の間近に来ると、麗人はクッと睨みつけた。

「お前とはもう何の関係もねぇ! 慰謝料だの、吠えていたがやれるもんならやってみろ! 金でお前と縁切りできるなら、いくらでも払ってやるよ! 二度と近づくな! 今後近づいて見ろ、お前ここいら一帯を歩けなくしてやるからな! 」

 有無も言わせない目力を向け、麗人はそのまま去って行った。

 文彦はただ茫然と佇むしかできなかった。

 純也はフッと小さく笑いを浮かべた。


 バタバタと足音が近づいてきて、複数の警察官が駆けて来た。

「大丈夫ですか? 」

 警察官が純也に駆け寄ってきた。

「通報が入りました。男が、首を絞めようとしていると」

 警察官は純也の首に指の跡が残っているのを確認すると、文彦に歩み寄って行った。

「ちょっと署まで来てもらいます」

 警察官が文彦の手を引っ張ると、茫然とした目を浮かべた文彦。

「わぁ~!! 」

 突然大声で叫び出した史彦は、そのまま走り出した。

「待ちなさい! 」

 追いかける警察官を振り切って、走り出した文彦は、そのまま歩道橋の階段を降りようとした。
 が!

 スルっと、足を滑らせそのまま真っ逆さまに転落して行った!

 
 頭から真っ逆さまに転落して行った文彦は、一番下まで転がり落ちぐったりとなってしまった。

 通り行く人達が、何事かと集まって来た中、文彦は虚ろに目を開いた。

「優衣里…俺が…間違っていた…。すまん…」

 力尽きる声でそう言って、そのまま意識を失った文彦。


 救急車のサイレン音が、どこか空しく近づいてきた…。



 立ち去って来た麗人は、反対側の階段を下り切った時、救急車が走って来るのを見てハッと立ち止まった。
 文彦が叫びながら走って行ったのは…。
 
 まさか…。

 ちょっと嫌な予感がした麗人。

「伊集院さん? 」

 声がしてハッと前を見ると、そこには部長の麗人がいた。
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