逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~

「どうしたんですか? こんな時間に。どこかに用事でもあったのですか? 」
「あ…」
 ちょっとと、言いかけた麗人だったがスッと頬に涙が伝うのを感じてハッとなった。

「す、すみません…」
 顔を背けてそっと涙をぬぐった麗人。
 だが、ふわりと暖かい温もりに覆われるのを感じた。

 え? …抱きしめてくれている?
 とっても力強くて、全身で護ってくれる暖かさ…。
 僕って、こんな包容力あったのか? 自分は不器用だって、ずっと持っていたけど。
 こんなに安心できる場所なら、ずっといたい。

「落ち着くまで、このままでいて下さい。…歩道橋の上、ずっと見ていました」

 あ、見られていたのか。
 じゃあ、朝丘さんに掴みかかったのも見ていたんだよね?
 本当の伊集院さんってきっと、そんなことしないと思うけど…。
 もしかして幻滅したかも…って、僕はそのくらいじゃ幻滅しないか…。
 
「すみません、駆けつけようとしたのですが。その前に、終わったようでしたので」
「いいえ…」

 部長の麗人が優しく頭を撫でてくれる。
 
 わぁ…僕の手、こんなに大きくて優しかったんだ。
 女の人の頭を撫でる事なんて、妄想でしか考えたことなかったから。

「伊集院さん、人は弱い生き物だと思います。でも、時には強くならなくては生きて行けない立場になる事もあります。僕もそうでしたから…。でも、もう伊集院さんが強がることはりません」

 部長の麗人の腕の中で、麗人はそっと顔を上げた。
 目と目が合うと、部長の麗人は優しく微笑んでくれた。

「伊集院さん。これからは、僕が伊集院さんの事を護ります」
 じんわりと胸が暖かくなってゆくのを感じた麗人は、潤んだ目で部長の麗人を見つめそっと微笑んだ。

「…じゃあ、私も部長の事を護っていいですか? 」
「え? 僕の事を護ってくれるのですか? 」
「はい。護らせて下さい」
「そうですね、お願いします。ただ、力ではなく愛で護って下さい」

 愛で護る?
 なんか良い響きだなぁ。
 
 ホッとした笑顔をうかべた麗人に、部長の麗人もそっと微笑み返してくれた。


「伊集院さん。今日は週末で、明日は休みなので今夜は一緒に居てもらえませんか? 」

 え??????
 それって…
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