逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~
着替えを済ませた麗人が降りてくると、タンポポが尾っぽを振って寄って来た。
「たんぽぽ、おはよう」
麗人が挨拶をすると、ご機嫌でワン! と吠えた、たんぽぽ。
「おっ、麗人おはよう。どうだ? 久しぶりのわが家は。ぐっすり眠れたか? 」
「あ、うん。よく眠れたよ」
そう答えた麗人をじっと見つめて来た鷹人。
「な、なに? そんなに見てくるなんて」
こんな目で見られると、もしかして昨夜の事バレている? ってドキッとするんだけど。
動揺を隠しながら、食卓に椅子に座った麗人。
そんな麗人を、ちょっとニヤッとした目で見ていた鷹人。
「優衣里ちゃん起きたかしら? 」
麗香が和室の様子を見に行った。
今、優衣里ちゃんって呼ばなかったか? 昨夜は、伊集院さんって呼んでいたけど。
「麗人、お前優衣里ちゃんと先の事を考えているのか? 」
「え? 何でそんなこと聞くんだよ」
「いや、お前の目を見ていると何となく分かるのだが」
「別に…今までは、副社長になる事で頭がいっぱいだったから」
「へぇー。じゃあ今は優衣里ちゃんの事、ちゃんと考えているのか? 」
父さんまで優衣里ちゃんて…。
「考えているけど、彼女はまだ婚約解消したばかりだから…」
「婚約解消って言っても、本気で好きだったわけじゃないんだろう? 」
「まぁ、そんな感じみたいだけど。色々バタバタ足そうだから、落ち着いてからが良いと思っているんだけど」
ふーんと、鷹人は一息ついてお茶を飲んだ。
「お前、元々彼女の事が好きだったんじゃないのか? 」
「え? 」
図星を指された麗人は、ちょっと赤くなった。
そんな麗人を見ると、鷹人は笑い出した。
「なんだ、やっぱりそうだったのか? お前が優衣里ちゃんを営業部にって強く押してきたときから気づいていたんだ。そう言えば、高校生の時に好きな人がいるって話していて。確かその子の名前が、伊集院って苗字だったと思い出したからな。あの時は、純也も同じ人が好きだったんじゃなかったか? 」
「え? 純也も? 」
「ああ、純也も伊集院さんが好きだって話していたぞ。でも、お前も同じ人が好きなのを知って遠慮してたけどな」
意外な話だ。
純也は、自分とは好みが違うって思っていたけど。
「おはようございます」
優衣里が麗香と一緒にやってきた。