逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~
全てを焼き尽くした果てに
いつも着るような服ではなく、今日はオレンジ色のブラウスに紺色のスラックス姿で、いつもよりちょっと大人の女性の魅力が引き立っている優衣里に、麗人はドキッとなった。
「どう? 麗美が着てくれない服を、優衣里ちゃんに着てもらったの。とっても似合ているでしょう? 」
似合っているって言いたけど、ちょっと恥ずかしいから言えない。
麗人はそっと視線を反らした。
優衣里は麗人の向かい側に座った。
そっと、目と目が合った麗人と優衣里は、昨夜の事を思い出して少し恥ずかしそうな目をしていた。
そんな2人を横目でチラッと見た鷹人は、クスッと笑っていた。
4人で揃って朝ごはんを食べ始めた。
たんぽぽも、リビングの端っこで朝ご飯を食べている。
朝ごはんが終わると、麗人の携帯電話が鳴った。
「はい、もしもし」
(麗人? 俺だけど)
「ああ、純也。どうしたんだ? 」
(昨夜、朝丘文彦が大怪我して病院に運ばれたよ)
「え? 」
あの時の嫌な予感は当たっていたのか?
(歩道虚の階段から真っ逆さまに転落して、酷い怪我で動けない状態らしい。意識は取り戻したらしいが、下半身不随になったようで歩けなくなったようだ)
「そうか…」
(それから、萩野彩だが。自宅が火事になり全焼して、本人は行くへ不明らしい)
「え? 」
(警察では、萩野彩が火を放ったのではないかと断定しているようで行くへを探しているようだ。自宅の焼け跡から、白骨死体がいくつも見つかっている事から。殺人容疑もかかっている。もしかしたら、会社に現れる可能性もあるから気を付けてくれ)
「分かった」
電話を切った麗人は小さくため息をついた。
「麗人、今日はこれからどうするんだ? 」
鷹人が声をかけてきて、麗人はハッとなり振り向いた。
「まだ決めてないけど」
「それじゃ、優衣里ちゃんのお父さんにご挨拶に行ってはどうだ? 昨夜は、突然うちに連れてきたわけだし」
「え? ご挨拶って突然すぎじゃない? 」
「ちょうどいい機会じゃないか、どうせ優衣里ちゃんを送って行くわけだからな」
「まぁ、そうだけど」
うん、確かに父さんが言う通り良いタイミングだ。
ちょっと物騒な話も聞いたから、優衣里さんのお父さんの耳にも入れておかないと、伊集院家も狙われる可能性があるから。