逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~
それからしばらくして。
麗人は優衣里を送って行く事を兼ねて、少し時間もある事からショッピングモールへ行く事にした。
まぁ、行ってしまえばデートのようなものである。
付き合って下さいと言ったけど、婚約解消したばかりの優衣里の気持ちを考えるとすぐにそれらしきことをするのは何だろうと思っていたが、昨夜は勢いに任せてと言っても関係を持ってしまったわけで。
もう気持ちは決まっているのかな? とも思えたのだ。
シンプルなデートではあるが、今までの麗人は一人でショッピングモールに来ては隣りに優衣里がいてくれたらいいのにと、一人で妄想ばかりしていた。
時折り、文彦と優衣里が歩いている姿を見かけたこともあったが、その時は一人でもやっとしていた。
今こうして優衣里が隣りにいてくれる事に、麗人はとても幸せを感じる。
ショッピングモール内のカフェでちょっと休憩する麗人と優衣里。
カップルばかりの中、2人で向かい合って座るとちょっと照れてしまう。
「私、こうゆう場所離れていなくて。すみません」
「いえ、僕も慣れていません。ほら、こうゆう場所ってカップルが多いから。一人で入るのは気が引けるから、いつもテイクアウトばかりなんです」
「そうなんですね。私もつい、自販機で買ったりコンビニで済ませたりです。でも、何だか新鮮です。あの人とは、こんなふうにカフェに入ったりすることは一度もなかったので」
「そうなんですね」
朝丘さんの事、言った方がいいのかな? でも、もう優衣里さんとは関係ない事だから言わない方がいいのかな?
「どうかしましたか? 」
「え? 」
「何か、考え込んでいます? 」
「あ、いいや何でもないですよ」
ん? と、優衣里はじっと麗人を見つめた。
「あのね。私、麗人さんとずっと一緒だったじゃないですか。だから、何となく考えている事とか思っている事が伝わって来るんです。だから、何を聞いても驚きませんから言いたい事は言って下さいね」
「あ、うん」
そっか。
優衣里さんの中にいたから、感情も共有してたって事だよね。
「わかったよ。でも、とりあえず今は大丈夫だから心配しないで。何かあれば、ちゃんと言うから」
「うん、分かったわ」
麗人はそっと優衣里の手を握った。
麗人の手のぬくもりを感じると、優衣里はホッと安心した。