逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~

 純也が気をつけるように言っていた事が的中してしまった。
 
 この火災は大ニュースとして取り上げられ、テレビでも放送されていた。
 駅前は騒然となり、駅前を通る人や他のオフィスビルの人達も怖がっていたくらいだった。

 沙原コンサルティングの入っていたオフィスビルは、結局全焼した。
 これを機会に建て替えるかどうかの話し合いで、鷹人はビルを買い取り自社ビルにする話をした。
 他の企業にはレンタルオフィスとして貸す事にして、殆どのフロアを沙原コンサルティングが使うように計画中。

 暫くは在宅勤務で業務も停止になる部署もあるが、火災保険も降りてくることもあり今までの貯えもある事から、この際休暇を楽しみながらゆっくり仕事をしようと言う事になった。
 火災の事を知り、取引先からの援助も来ているようで今までの信頼関係がとても役立っているようだ。

 
 この火災がきっかけで、優衣里は優造から仕事を辞めて戻て来て弁護士として働いてほしいと言われた。
 優造に反抗して沙原コンサルティングに入社した事もあり、ここは優造の言う通りにしようと優衣r期は沙原コンサルティングを退職した。

 退職しても現在は在宅勤務になった麗人にとっては、優衣里の時間に合わせやすい為とくに問題は内容だ。
 鷹人は優衣里が仕事の懸け橋になってくれない事が、ちょっと残念だと言っている。

 
 
 麗人が九条家から沙原家に戻ったことをきっかけに、純也が九条家に戻って来た。

 戻って来た純也は…。
「痛ってぇ…」

 純也の育ての父親である順吉が、手に包帯を巻いている。
 父親と言っても初老に差し掛かった順吉だが、純也と似ている顔立ちにきりっとした目元が魅力的で今でも女性にモテモテで交際申し込みが絶えないようだ。

「良かったな、軽くすんで火傷」
「まぁ…そうだけど…」
「まったくお前は、麗香に似ていてドキッとする事が多い」
「え? 俺が母さんに似ている? そんなこと、初めて聞いたかも」

 包帯を巻き終えた順吉は、そっと純也の隣に座った。

「麗香は、小学生の時、火災に巻き込まれた小学生を助けて顔や体に大火傷を負った事があったんだ。救助隊も炎を恐れて慎重だったが、麗香は一目散に助けに入って。自分は大火傷しているに、小学生の子には火傷一つ負わせない状態で助け出したんだ」
「嘘…全く、そんなふうに見えないけど」
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