逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~
「奇跡が起こったと言ってもいいくらいだよ。ずっと諦めていたけど、火傷の跡を極限まで分からなくできる医師に出会ったんだ。凄腕の整形外科医で、今では予約は10年待ちだよ。日本に帰って来たばかりで、直ぐに麗香の事を聞いて手術させてほしいって言われて手術を受けたんだ。よく見ると、火傷の跡は分かるようだけど普通に見ているだけでは分からないくらいまで綺麗になって、唯一残ったのは心臓移植をした手術跡だけで体も綺麗になったくらいだよ」
「そっか、そんな奇跡が起こったんだ」
「その奇跡が起こせたのは、麗香一人の力ではなかったよ」
「え? 」
驚いている純也に、順吉はそっと微笑んだ。
「鷹人君がいたから、今の麗香がいるんだよ」
「父さんが? 」
「そう。だって、麗香が助けた小学生は鷹人君だったからね」
はぁ? 嘘…。
そんな話し聞いた事なかったけど。
すっかり驚いている純也を見て、順吉はクスッと笑った。
「麗香と鷹人君は、離れていた期間もあったけど。ずっと、20年以上も想い続けていた人だったんだ。そして、麗香の心臓は鷹人君のお母さん。つまり、お前のお婆さんからもらった心臓だよ」
「信じられない繋がり…。それに、20年以上も想い続けてきたのもそうだけど。心臓まで移植してもらえるなんて」
「運命の繋がりかな? 」
「運命? 」
運命という言葉を聞くと、純也は何となく胸がじんわりしてきた。
母の麗香が遠い昔に、家事から父の鷹人を助けて大やけどを負った。
今の純也も火事からある人を助けて、火傷を負った。
幸い顔に火傷を負う事はなかったが…。
「お前は、麗香と似ているんだな。親子だから、当然だけど」
「うん…。母さんに、そんな過去があったなんて知らなかったけど。俺は、自分のした事を後悔はしていないから」
「それでいいよ、火傷も幸い軽くて済んだから。でも、暫くは大人しくしているんだよ」
「はーい」