逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~
伊集院家の事情

 このまま家に帰るのが当たり前だよね。
 黒服の男に会釈をすると、そのまま一緒に道路わきに停めてある黒い乗用車に向かった。

 後部座席のドアを開けてくれた運転手。

 優衣里を乗せると、車はそのまま走り出した。

 

 伊集院家って行った事がないんだけど、優衣里さんの部屋分かるかな?
 かなり広い屋敷って聞いたことがあるけど。


 車を走らせ15分程の場所に伊集院家はある。
 日本家屋のような広い屋敷に、日本庭園のような庭、門の外にはSPが2人立っていて車が到着すると扉を開けてくれて、玄関までついて来てくれる。
 そして両開きの玄関を開けてくれて、中へ招いてくれる。

 かなり広い家の中。
 長い廊下が続き、広い仏間に和室が続き、その隣にはサロンのようなリビングとキッチン。
 家族がくつろげる居間は畳が敷いてあり、ゆっくり寛げるように掘りこたつが置いてある。

 優衣里さん、貴女はこのお屋敷に相応し人です。
 決してあんな男と結婚するような人じゃありません。

 廊下を歩きながら麗人はそんな事を考えていた。

「お帰り、優衣里」
 優しい声が聞こえて来て麗人は足を止めた。
 
 前方から歩いてくる背の高いガッチリした男性。
 優衣里と似ている顔立ちだが、目つきはちょっと鋭くどちらかと言うとイカツイ感じが受けるが、表情が優しく声もソフトである。
 家の中だからか渋い和服に身を包んでいる所が日本家屋に相応しい。

 この男性は伊集院優造、伊集院家の党首である。

「た、ただいま帰りました」
 ペコっと頭を下げた麗人を見て、男性はちょっとキョンとした目を浮かべた。

「あ…あの。…ごめんなさい、今日の昼間なのですが。ちょっと、職場で頭をぶつけてしまったのです。それで、記憶があいまいになっているのですが…」
「頭をぶつけたのか? それは大変じゃないか、病院へは行ったのか? そんな記憶があいまいになるくらいだぞ」
「いえ、そこまでの事ではありません。すぐに思い出せると思いますが、今はちょっと曖昧なので教えてもらえますか? 」

 優造はじっと優衣里を見つめた。
「一緒に行こうか」
 言いながら、そっと優衣里の手をとった優造。

 手を引かれながら2階へ続くラセン階段を上がって行く麗人。
 
 暖かくてとてもごつい感じがする優造の手。
 だが、この手に握られていると安心できる。
 優衣里さんはとても良いお父さんに、恵まれていたんだね。
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