逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~
表裏一体
火災から1週間後。
警察病院の一室に顔を包帯で追われた女性がベッドで眠っている。
この女性は彩。
顔に大やけどを負ったが、救助隊に助けられ一命をとりとめたのだ。
殺人容疑並びに放火の現行犯で逮捕された彩だが、今は回復を待ちつつ病院での取り調べが行われている。
包帯で覆われている顔だが、唯一見える左目をゆっくりと開いた彩。
「…こんな顔になって生きているなんて、私は未だこの世に未練があるのかしら…」
独り言をつぶやいた彩は、何だか穏やかな声をしていた。
コンコン。
ノックの音に、彩はゆっくりと目を動かした。
スーッと扉あけて入っていたのは、かっちりとした紺色のスーツに身を包んだ純也だった。
右のこめかみにガーゼを当て、両手には包帯が巻かれていて痛々しい姿である。
「また来たんだ、あんた…」
「いいじゃん、唯一面会が許可されているんだぜ。担当弁護士だからさっ」
フッと小さく笑った彩。
「本当に私なんかの弁護するの? しかも、あの炎の中に助けに来るなんて。アンタどうかしているわ」
「そうだな、俺はどうかしている。まぁ、犯罪差の弁護ばかりしているから変わっててもいいんじゃないのか? 」
「ばかね、一歩間違えたらアンタも死んでいたのに」
あの火災の中。
彩はその場に倒れ煙に巻かれて意識を失う所だった。
崩れ落ちる天井が顔に落ちてきて、火傷を負った彩だったが、このまま死ぬと思った時、誰かに抱きかかえられた。
火傷のせいでハッキリ姿が見えず、ぼんやりと見える姿の中覚えのある感覚だけを感じていた彩。
屋上へと連れていかれた彩は、薄れゆく意識に中聞こえて来た話し声に驚いていた。
「なんてことをするんだ、君は! 止めるのも聞かないで、飛び込んでゆくなんて! 」
救助隊員が誰かに怒っている声に、ハッとなった彩。
「すみません。誰一人、死なせたくなかったので」
と、答えた声に聞き覚えあると思った彩。
「早く君も乗って」
彩が運ばれた救助ヘリに、一緒に乗って来たのは純也だった。
唯一見える片方の目で見えた純也の姿に、彩は驚いたがじんわりと込みあがって来る喜びを感じた。