逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~
ゆっくりとドアが開いて、入って来たのは…優衣里だった。
火災後に髪をバッサリ切った優衣里は、現在ショートボブになって、随分お雰囲気も変わり見違えるほど綺麗になった。
可愛いピンク色のブラウスに、清楚なブルーのスラックスに黒いパンプス姿はちょっとカッコイイ系の女性に見える。
ショートボブになった優衣里は、顔がハッキリ見えて女優も顔負けの顔立ちをしている事に、文彦はとても驚いた。
文彦は申し訳なさそうにそっと頭を下げた。
優衣里は持って来た小さな果物のセットを床頭台の上に置いた。
「朝丘さん、もうご自身を責めないで下さい」
え? と、文彦は優衣里を見た。
「私は貴方を許します。なので、とりとめた命で貴方の本当の幸せを手に入れて下さい」
「…本当の幸せ…」
「貴方が計画した事は、証拠が不十分で事件として取り上げられることはなくなりましたのでご安心下さい。でも、貴方と婚約を破棄した事実は変わらないようです。なので…」
鞄からそっと小切手を取り出し、優衣里は文彦の差し出した。
「これは、婚約破棄をした慰謝料です」
「そんな…」
「いいから、何も言わずに受け取って下さい」
そう言われて、文彦はちょっと震える手で小切手を受け取った。
受け取った小切手には1憶の金額が書かれていて、さすがにもらいすぎだと文彦は驚いた。
「そのお金で、もう一度人生をやり直してください。貴方が本当に求める幸せを手に入れて下さい。その時、どうしても私の力が必要な時は。戦友として力を貸します」
「…戦友か…いい響きかもしれないな…。ありがとう…」
有難うといった文彦が小さく笑った。
その笑顔は、優衣里が一度だけ見たことがある笑顔だった。