逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~

(ついに子供が生まれた。2700gで小さな女の子。生まれたての赤ちゃんを抱っこさせられ、とても可愛くてたまらなかった。私の子供ではないが、可愛いと思った。こんなに小さくて、はかない命が誕生した事がとても感動だ。産まれて来てくれて、本当にありがとう。妻は名前は私に任せると言った。だから「彩」と名付けた。私の夢で、女の子が産まれたら「彩」と名付けたかったからだ。とても可愛い彩、素敵なレディーになるんだよ)

(夜中に妻が首を絞めて来た。目が覚めて逃げたが、ものすごい形相で追いかけてきた。子供が産まれて1ヵ月の経過しないのに、もうセックスさせろと言ってくる。医師からも1ヶ月はダメだと言われているのに、我慢できないと言う。まだ出血も完全い止まっていないのにできるわけがないと断ると、ものすごい剣幕で怒り始める。…いつか、セックスしない事で殺されるかもしれない。彩を残して死にたくはない…本当の娘ではなくても私は、彩を愛している。素敵なレディーに育てたい)

 
 最後の日記には文字が震えるように書かれていた。
 それっきり書かれていない日記。


「その日記は、戸籍上の貴女の実のお父さんが書かれた日記です。白骨遺体からは、何か締め付けられた形跡も見受けられるようなので。恐らく首を絞められたと断定されています」
「じゃあ、お父さんはいなくなったんじゃなくて殺されていたってこと? 」
「恐らくそうです。ずっと、キッチンの下に眠っていたようです」
「…母も同じ事をしていたの? 私と」
「そのようですね。交際していた男性の中には、家の畳の下から発見された人もいました」

 スッと彩の頬に涙が伝った…。

「…遺体を隠したかったわけじゃないの…。本当は、離れたくなかったの…遺体を隠しておけば、ずっと一緒に居られるって思ったの…」

 そのまま泣き崩れてしまった彩は、ずっと号泣していた。
 母親が言っていた事は逆で、父親はいなくなったのではなく殺されていた。
 そして自分を愛してくれていた…血が繋がらなくても…。

 その事実が判っただけでも、彩は幸せだと思った。

 
< 126 / 133 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop