逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~

 その後も取り調べは続いたが、現状では彩の精神状態はマトモではないと判断されている。
 性的虐待も加わり、殺さないと自分の身を護れなかったと判断もされている。
 性的虐待のトラウマから、性依存症になっているのは間違いなかった。


 刑務所の中でも彩は、性欲が押さえられず男性刑務官御モーションをかけていたが、職務上相手にされなかった。
 
 4人部屋であり、トイレの中が一人になれる場所で、我慢できずトイレの中で自慰行為をする事もあった。
 だが、現在妊娠中である事からその行為はやめるようにも言われている。

 時折、純也が面会に来て話を聞いているが、とても素直に話していて大笑いするときもあるそうだ。



 麗人と優衣里は、あれから仕事ですれ違う日々もあったがやっと落ち着いた事からようやく婚約できた。

 鷹人から入籍だけは先に済ませておくように言われ、婚約を機会に入籍する事にした麗人と優衣里。

 はれて沙原優衣里になった優衣里は、住まいを伊集院家から沙原家に移した。

 新婚だから別々に暮らそうと言う話もあったが、優衣里がいずれかは一緒に住むなら初めから一緒に住む方がいいと言い出したのだ。

 麗人が結婚する事が決まると、麗美は社員寮へ入った。
 まだ現役で暫く刑事を続けると言っている麗美は、彼氏もいないままである。


 
 青天の空の下。
 優衣里は麗人と一緒に母のお墓参りにやって来た。

 見渡しの良い静かな霊園に納骨されている百里。
 いつも綺麗な花が飾られ、お線香を絶やさなず炊いてもらっている。
 
「お母さん、私結婚できました」
 優衣里がそう報告すると、そっと隣に並んだ麗人。
「ずっと想い続けていた麗人さん。すれ違った時間もあったけど、麗人さんが私の人生を取り戻してくれました。だから、この先は麗人さんに寄り添い一緒に年を取って行く事が楽しみです」
 
 麗人はそっと、優衣里の手を握った。
「優衣里さんのお母さん、沙原麗人です。僕の事を助けてくれて有難うございます」
「え? お母さん、麗人さんの事助けてくれたの? 」
「うん…。優衣里さんの跡を追って、僕も歩道虚から飛び降りたんだけど。その時、何かの声がまだ死んではいけないって助けてくれて。気づいたら、優衣里さんの中にいたから」
「その声が、もしかしてお母さんだったの? 」
「そうみたいだね。元に戻る時、娘を宜しくお願いしますって聞こえたから」
「そうだったのね」

 お線香の煙が優しく麗人と優衣里を包んでくれているようで。
 きっと亡くなった百里も喜んでいるのだろうと思えた。
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