逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~

「純也、久しぶりだね」
「ああ、久しぶり」
「あれ? 純也の地域ってここの学校だったか? 」
「そうだよ。ずっと、アメリカにいたから2ヶ月前に帰って来て今年度から通い始めているんだ」
「そうだったのか、この子は結婚式の時にいた太陽君? 」
「そっ、3年生だよ」
「え? じゃあ、うちの優と麗の同級生になるんだな」
「へぇー、そうなんだ」

 純也と麗人が話していると、小さな赤ちゃんを抱っこして一人の女性が歩いてきた。

 麗人はどこかで見覚えがあると思った。
 隣にいた優衣里も、何となく見覚えがあると思った。

 女性は麗人と優衣里の傍に来ると、丁寧なお辞儀をした。

「…ご無沙汰しております。…」

 そう挨拶をされてると、麗人も優衣里も声に聞き覚えがあると思った。

「私、萩野彩です」

 え???

 驚いた麗人と優衣里だが、言われてみると彩の面影が残っていた。
 
 すっかり別人のように穏やかな表情になり、優しい目をしている彩の姿に、麗人は気ッと純也が支えて来たのではないかと感じ取った。

「俺、彩と結婚したんだ」
「え? いつ? 」
「まぁ、正式には9年前には婚約したんだけど。色々と大変で、病院での治療もあり。アメリカに渡って完治してから、ちゃんとプロポーズして結婚したから入籍したのは2年前だ」

 驚いた麗人優衣里は顔を見合わせた。

「因みに太陽は、彩が産んだ子供だ。太陽の父親は、あの文彦だ」

 文彦の子供。
 言われてみると目元が文彦に似ている。

「太陽には、ちゃんと真実を話している。でも、俺が父親なのは変わらない。そして、彩が抱っこしている赤ちゃんは。俺と彩の子供。男の子で名前は昂也(こうや)、もうすぐ5ヶ月になるよ」
「そっか。驚く事ばかりだけど、純也が決めたことだから僕は応援するよ」
「有難う。太陽は、今日から少年団のサッカーチームに入るんだ」
「そうか、じゃあ優と一緒だね」

 優衣里は彩をじっと見つめて、歩み寄って行った。

「彩さん」
 
 声をかけられると、彩はちょっとビクッとして優衣里を見た。
< 131 / 133 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop