逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~

「そう言えば、部長が内容を録音していると言っていました」
「それなら有力な証拠になるぞ。だが…」

 優造はじっと優衣里を見て、少し悲し気に瞳を揺らしていた。

「有難うな。ちゃんと、話してくれて」
「え? 」

「お前は、なかなか本音を話してくれなかったから。朝丘さんと結婚すると、一方的に言って来て。私が詳しく聞こうにも、隙を見せなかった。お母さんの事を、ずっと気にしていて結婚どころか恋愛すらしないようだったから」

 そうだったのか。
 だから、何か驚いたような顔をしていたんだ。

 あの綺麗なお母さんが亡くなった事で、優衣里さんは深く傷ついていたのだろうか?

「優衣里…。私は、父親としてとても不器用だ。忙しさに甘えて、お前の事をほおっておいたのは事実だ。いくら我が子として愛していたとしても。お前がしてほしい事を、私は何一つやってあげられなかったのだと思う。それ故に、結婚するなら最高に幸せになってほしいと願っていた」


(麗人。心から愛する人は、相手がどんな容姿でも、どんな境遇でも気持ちは変わらないものなの。お母さんね、ずっとお父さんの事を20年以上も想い続けて来たの。結ばれるなんて、考えもしなかった。ただ…お父さんが、幸せになってくれたらそれでいいって思って生きて来たの。20年以上も離れていて、覚えていないから気づかれないって思っていたんだけどね。お父さんの方から近づいて来てくれたのよ。だから、麗人も心から愛する人が現れたら、諦めないで気持ちを貫き通してほしいの)

 麗人が高校生の時、初めて人を好きになった時に母の麗香が言った事だった。

 父の鷹人と母の麗香は、火災の中助けたことから始まった恋だったと聞いているが詳しくは覚えていない。
 麗香は昔は顔や首に火傷の跡が酷く、誰もが避難して通り過ぎていたが、鷹人に出会い腕のいい医師に出会い火傷の跡が綺麗に消えて殆どわからなくなったと。
 
 そんな壮大な恋愛を果たした鷹人と麗香の間に産まれた麗人は、小さな頃から沢山の愛を受けて育って来た。
 その為いつも心に余裕があり、とても優しい男性に成長した。

 だが…。
 高校生の時に出会った心から愛する人とすれ違ってしまった事から、ちょっと卑屈になってしまった。
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