逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~
優衣里が挨拶に来ても、麗人は不愛想なままでぶっきらぼうな言葉しか発することが出来ず、いつも一人で後悔ばかりしていた。
今日こそは話しかけてみよう。
そう思いながら、優衣里がいつもオフィスビル近くのカフェで珈琲をテイクアウトしている事を知り、麗人はお昼休みの終わり頃にテイクアウトして持ち帰って来た事があったが。
戻ってくると、文彦と楽しそうに話している優衣里の姿を見てせっかく買っていたテイクアウトの珈琲を渡さないまま自分で飲んだこともあった。
それからも何度も優衣里に話しかけようと近づいたが、その度に文彦が現れて邪魔をされていた。
陰では女癖が悪いと噂がある文彦が、何故優衣里と付き合っているのか疑問だらけのまま、2人が結婚する事が決まったと報告を受けもう自分が立ち入るスキはないとあきらめた。
このまま営業部にいても辛いだけだろう…。
そう思った麗人は、少し早いが優衣里が結婚した後に副社長に就任して欲しいと鷹人に頼んだ。
鷹人は何か麗人の様子がおかしい事に気づき、少し考えてみると言って保留にしていた。
どうこうしているうちに優衣里は文彦と結婚した。
結婚式には同僚として麗人も営業部代表で呼ばれていた。
何度も打ちあけなくてはならないあの会話…。
そして優衣里の本心を聞きたかった気持ちが混乱して、麗人は複雑な気持ちで優衣里と文彦の結婚式を見ていた。
文彦の両親は、何だか意地悪そうに見えた。
母親は花嫁より自分が目立つような紫色の派手なワンピース姿で、父親は紺色のモーニングに身を包んでいたがなんとなく品が無いように見えた。
保険代理店の自営業をしていると言っていたが、口調はキツく身勝手に見えて仕方がなかった。
対する伊集院家は、父親の優造と兄の優太(ゆうた)が出席していたが、2人共弁護士だけあってシックなモーニング姿でとても気品あふれる姿だった。
ウェイディングドレスは文彦側が選んだようだったが、優衣里には似合わない古びた色のアイボリーでデザインはハイネックのパフスリープがなんとも時代遅れを匂わせていて着せられている優衣里が可哀そうに見えた。
隣にいる文彦も白いモーニングを着ていても、ちっとも似合っていなかった。
自分が焼きもちを焼いているから、そう見えてしまうのだろうか?
麗人はそう思っていた。
だが、他の出席者からも同じような声が響いていた。
「花嫁さんのドレスは、おさがりかしら? 」
「なんだか似合っていないわね」
「男の方が遊んでいる感だけど」
「女性側の親族は、とても立派な方ばかりなのにね」
参列者はみんな同じ事を思ているのか?
ヒソヒソ聞こえる声に、麗人はちょっとだけ納得していた。
優衣里と文彦の結婚式が終わり。
優衣里は朝丘に苗字が変わり勤務を続けていた。
そんなある日。
麗人は、文彦と彩がとんでもない話をしているのを耳にした。
それがあの「1億の保険金」だったのだ。