逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~
まったく!
なんで素直になれないんだろう…自分でも嫌になるよ…。
小さくため息をついて、麗人は席に座り仕事の続きを始めた。
だが。
麗人は気づかなかったが、部長の麗人は顔を伏せて頬を真っ赤にしていたのだ。
メガネの奥の目はすっかり動揺していて、恥ずかしそうで…。
それに気づかれたくなく、わざと無愛想いな表情で通り過ぎただけだったのだ。
「お、おい優衣里。どうしたんだ? 今日は」
文彦が声をかけて来た。
「なんだか、いつもと違うような気がするが? 」
「いいえ、変わりません。おしゃれをして、何が悪いのですか? 」
「悪いなんて言ってないだろう? 急に変わったから気になって」
「どうぞお気になさらず。早く外回りに行かれたほうが、良いと思いますよ」
仕事をの手を止めないまま答える麗人。
文彦は何か納得できない気持ちだったが、綺麗な優衣里を見ているのは気分が良かった。
そのまま外回りに出て行った史彦。
彩は机の向こうでチラチラと優衣里を見ていた。
なんなの? 急に髪を下ろしてメイクまでして、あんな明るい色を着ているなんて。
まぁ何をしても、私には叶わないわ。
アンタが結婚する文彦さんは、私にぞっこんなの。
あんたはこの先も、文彦さんに抱かれる事はないけど、私はもうとっくに文彦さんに抱かれているのよ。
もしかしたら、あんたより先に子供ができちゃったりして。
小ばかにしながら優衣里を見ていた彩。
お昼休みになり、優衣里はお弁当を持って屋上へとやって来た。
オフィスビルの屋上は、囲いがしてあり雨の日でも休憩できるようになっていてテーブルと椅子もある。
お昼休みに屋上へ来る人は少なく、とても静かに過ごせる場所である。
麗人は屋上で一人静かにお弁当食べていた。
お手伝いさんが作ってくれたお弁当は、栄誉バランスもしっかり考えてあり、お肉と魚両方が入っている。
今日はハンバーグと白身魚のフライ、人参のサラダ、パイナップルが入っている。
おにぎりが2つあり、昆布と鮭が両方入っていた。
「優衣里さんは、こんなに美味しいお弁当を毎日食べていたんだ。きっと、優衣里さんと結婚したら美味しいお弁当を毎日作ってもらえるんだろうなぁ…」
幸せそうにお弁当を食べている麗人。
カチャッと屋上のドアが開く音がした。