逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~

 誰が来たのだろう?
 何気に麗人が目をやると、やってきたのは部長の麗人だった。

 わぁ…。
 屋上なんて来た事なかったけど…。

「伊集院さん、あの…これを…」

 歩み寄って来た部長の麗人が差し出したのは、優衣里がお気に入りにしているカフェの珈琲だった。

 ああ、この珈琲っていつも渡しそびれていた珈琲だ。
 今日はどうして…。

「いつも、伊集院さんが屋上でお昼を食べている事。…知っていました…」

 ああ、そうだったこっそり跡を着けた事があったからな。

「お聞きして宣でしょうか? 伊集院さん」

 改まって何を聞きたいのだろう? 

「なんでしょうか? 」
「はい。どうして、朝丘さんと一緒にお昼を食べないのですか? 今まで、2人きりで食べている所を見たことがありません」

 うん、確かに見たことがなかったよな。
 萩野さんとは食べていたけど。

「彼は外回りばかりなので、お昼の時間が合わなくて。たまに時間が合う時は、一緒に食べていますが」
「でも、萩野さんがいつも一緒にいますよね? どうして、2人きりで食べないのですか? 僕なら、大好きな人とは2人きりで食事をしたいと思います」

 へぇー。
 今日は結構はっきり言うんだ。
 って、感心している場合じゃないな、今の僕は優衣里さんだから。

「そ、そうですよね。自分も、2人で食べたいって思いますけど。なぜかいつも、萩野さんが割って入ってくるんです」
「萩野さんは、伊集院さんとはそんなに親しいのですか? 」
「高校生の頃からの友達なので」

 確か、そう言っていたよな。
 うんうん。

「友達ですか、それは微妙な関係ですね。女性同士の友達って、紙一重って聞きますから」

 ほう? すごいこと言えるんだ。
 僕こんなこと言えたっけ?

「じゃあ…部長なら、間に友達が入ってきたらハッキリと断ってくれますか? 2人でいたいからと」

 じっと見つめられると、部長の麗人はドキッとした目を浮かべた。

「勿論、自分なら言いますよ。邪魔して欲しくありませんから。たとえ友達でも、その辺りは弁えるのが礼儀だと思いますので」
「そうですよね。…なんだか、部長の方が素敵ですね朝丘さんより」

 って、ちょっと挑発かけておこうかな。
 もっと素直になれるように。

 お弁当を片付けて、麗人は立ち上がった。
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