逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~
バランスの格差
週末。
伊集院家ではちょっとした食事会を行う事になり、朝からお手伝い達が準備をしていた。
これは、彩が部長を誘い一緒に食事に行って欲しいと頼んできた事から、それなら我が家で食事をしながら話をしましょうと提案したのだ。
言い寄って来る話をするなら、どこかのお店では人目がありなかなか言い出せないかもしれない、万が一相手が怒り出した時、我が家なら父の優造もいる事から助けてもらえるから安心だと彩を納得させた。
「それじゃあ朝丘さんも呼んでほしいわ。だって、優衣里の彼で婚約者でもあるんでしょう? きっと、傍にいた方がいいともうわ」
と、彩から言い出した。
これは好都合だ。
ちょっと、2人のあの密会を匂わせてもいいかもしれないと麗人は思った。
ラフな食事会の設定と麗人は言ったが、ちゃんと和服に身を包んで綺麗に髪をアップに結っていた。
綺麗なブルー系の生地にピンクの花柄模様が桜吹雪のようで、とても上品で可愛さを引き立てている。
これは成人式の時に優造が優衣里の為に買ってくれた晴れ着である。
本当は史彦と結納を交わすときに着る予定だったが、優造の話では朝丘家から結納は無しにしてくれと断りがあったそうだ。
恐らく結納金がないからだと思われる。
11時を過ぎる頃。
部長の麗人がやって来た。
九条家の運転手に送って来てもらった部長の麗人は、ちゃんと清楚なスーツに身を包んでいた。
史彦も来ると聞いた事から、優衣里のお祝いを兼ねていると気を使ったようだ。
出迎えた優造も、スーツ姿で、まるで両家の顔合わせのようなスタイルに見えた。
相変わらず不愛想で分厚い眼鏡をかけて、素直な気持ちを隠している部長の麗人。
「部長、本日は来て頂いて有難うございます」
和服姿の麗人がやってくると、部長の麗人は息を呑んだ。
綺麗な人ってドキッとしたんだよね?
だって、和服美人が大好きなんだからさっ。
純粋な日本人の女性で、結婚式には白無垢を着て欲しいって夢見ていたんだから。
麗人はじっと部長の麗人を見つめた。
部長の麗人は不愛想のまま会釈をした。
「お招きいただき有難うございます。…伊集院さんの家は、とても格式のある家なのですね」
ぎこちない言葉であるが、ちょっと伏し目で部長の麗人は赤くなっているのが判った。
照れている。
今日は、好みの格好でって選んで正解だった。
これでもっと素直になれるんじゃないかな?
そんな事を想いながら、麗人はリビングへと部長の麗人を案内した。