逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~

 間もなくして文彦がやって来た。
 家に招かれたと言うのに、ラフなジーンズにパーカー姿で現れ髪もボサボサで、とても婚約者の家に招かれたような恰好とは思えない姿に優造は少し呆れていた。

「お邪魔します、お義理父さん」
 ちゃっかりお義理父さんと呼ぶ文彦に、優造は内心呆れていた。
 
 そう呼ぶならもっとマシな格好してくるべきだろ?
 婚約者の家に初めて来たのではないのか? 
 育ちが丸わかりだな。

 あきれた様子で優造は文彦をリビングへ案内した。


 リビングでは食卓に座っている部長の麗人が、いつもの不愛想な顔のまま優衣里と話している姿が目に入った文彦。

 なんだ? 婚約者の俺を差し置いて、なんで部長と話しているんだ?
 内心ムカッとした文彦。

「いらっしゃいませ、朝丘さん。どうぞ、こちらにおかけ下さい」
 
 優衣里が座っていた席からは離れた位置に案内された文彦。

「なんでお前と離れているんだ? 俺は、お前の婚約者だろう? 」
「いいじゃないですか、バランスですよ」
「はぁ? 」

 麗人はクスッと笑った。

「今日の私の姿を見て下さいよ。和服の私と、貴方の格好じゃどうでしょう? 」

 言われると文彦は何も言い返せず、苦虫でも噛んだような顔をしていた。

「お前が言わないからいけねぇんだよ! 和服着るならそう言えよ! そうしたら、俺も合わせて来たのに」
 言い訳のような事を言った文彦は、何となく情けなく思えた。

「ごめんなさいね。だって、結婚相手の家に御呼ばれされるのですから。それなりの服装で、こられるのは当然かと思っていたので。部長だって、ちゃんとスーツでお越しになっているじゃないですか」

 ん? と、史彦は部長の麗人を見た。

 いつも会社で着ているスーツより高級なもの着てやがる。
 あいつの家ってそんなに金持ちなのか?
 そう言えば、あいつは俺より後に入社しているのに部長まで出世してやがる。
 もしかして何かコネでも使っているんじゃないのか? 
 営業成績もそれほど良くなかったと思うけど?
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