逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~
食事が終わるとアフターに珈琲が出てきた。
とてもいい香りの珈琲で、甘い香りが漂っていた。
「ねぇ優衣里。聞いてほしい事がるのだけど、いいかしら? 」
あ、きたかな? あのこと。
「はい、いいですよ」
はにかんだ笑顔で答えた麗人。
「実は私、見ちゃったのよ」
え? 見ちゃった?
彩はニヤッと含み笑いを浮かべて、携帯電話を取り出し写真を見せた。
その写真は、屋上で優衣里と部長の麗人が2人で会っている場面だった。
麗人が珈琲を買ってきて、優衣里に渡している所を写真に撮られていた。
ゲッ、見てたんだ。
こっそり見てて写真撮って、浮気しているとか言い出す気か?
麗人は彩がどう言うのか待った。
「これ、部長と優衣里よね? 2人きりで屋上で、何をしていたのかしら? 」
まるで文彦を挑発するような口調で、優衣里を見ている彩。
「ただ、お弁当を食べていただけですけど? 一人で食べていたら、部長が珈琲を差し入れに来てくれただけです。それが何か? 」
麗人は居直って答えた。
「珈琲を差し入れる仲なの? 優衣里と部長って」
チラッと文彦を見た彩。
文彦は彩の言葉にすっかり乗せられ、イラっとした表情を浮かべていた。
黙って聞いていた部長の麗人は、ちょっと厳しい目をして彩を見た。
「萩野さん、珈琲を差し入れする仲とは、どうゆう意味で言われているのでしょうか? 」
「どうゆう意味って。わざわざ人目を忍んだ屋上に、珈琲を差し入れて持ってゆくのかと思ったものですから」
「ただの上司と部下。それ以上でも、それ以下でもありません。伊集院さんには、かなり無理な事を頼む事も多いので。たまには珈琲くらいご馳走しても、悪くはないと思います。人目を忍んでと言われますが…」
部長の麗人はメガネの奥でニヤッと、目を細めた。
「萩野さんも、よく給湯室で朝丘さんと親密そうに話していますよね? 」
はぁ?
彩の顔が怯んだ。
文彦もギクッと怯んだ目を浮かべた。
「親密だなんて、仕事の相談をしていただけですけど? 」
「そうなのですか」
「ええ、そうですよ。そんなに、親し気に会っているわけじゃありませんから。ねぇ、朝丘さん」
「あ、ああ。そうですよ」
目くばせをして、彩人と文彦は話を合わせた。
麗人は部長の麗人をじっと見た。