逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~
優衣里は仕事を終わらせ、そのまま退社して行った。
「部長、お先に失礼します」
挨拶をした優衣里に、麗人は不愛想な目を向けて頭を下げた。
そのまま帰って行く優衣里をチラッと見ていた麗人。
「あ、優衣里待てよ! 」
帰社したばかりだが、文彦は帰り支度を始めた。
そんな様子をみながら彩も帰り支度をしていた。
そのままオフィスビルを出て来た優衣里。
その後ろを文彦が追いかけて来た。
「優衣里、待てよ! 」
追いついて来た文彦が優衣里の手を掴むと、触らないで! と言わないばかりに振り払われた。
「おい! なんなんだよ! それが夫に向かっての態度なのか? 」
「…その言葉は、貴方にそっくりそのままお返しします」
「はぁ? 俺が何をしたと言うんだよ! 」
優衣里は鞄から一通の書類を取り出して文彦に突き付けた。
「これは、貴方が私に健康の為にと言って飲ませていたサプリから検出されたものです」
書類を見た文彦はギクッと怯んだ。
「このサプリには、微量に毒が入っていました。サプリを全て飲み干した時、毒の量が致死量に達して私はきっと心不全状態で死んでしまう…。そんなところでしょうか? 」
「ちょ、ちょっと待て! 俺は知らない、それはメーカー側がやった事じゃないのか? 」
「いいえ、このサプリメント。本物は、全く違うやつでした。きっと、貴方が中身をすり替えて渡したのだと思われます」
「そんなことするかよ! 」
そっと視線を落として、優衣里は歩き出した。
「優衣里、まったく誤解だ。俺は何もしていない、信じてくれ」
「信じません。…貴方は、私と結婚したのは伊集院家の財産が欲しかったからでしょう? 」
「何言っているんだよ、お前は俺の方に嫁いだじゃないか! 」
「それでも、父が亡くなれば私に受け継がれる財産はあります。でも、私が死ねばそれは貴方のモノになると考えたのでしょうね」
「バカ言うなよ! 」
文彦の言葉を背に歩いて来た優衣里は、歩道橋の上で立ち止まった。