逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~
ねぇ、ここであの動画を見せた方がいいと思うよ。
2人が密会して、保険金をかけるとか言っていたやつを。
麗人がじっと見ていると、部長の麗人は気を落ち着かせる為か珈琲を一口飲んだ。
「お仕事の話だったのですか。聞こえてきた内容が、保険金をいつかけるのか? という内容だったのですが。営業部に、保険金って何か関係がありましたか? 」
ギクッと、彩と文彦の顔色が変わった。
「何を言っているのですか? 部長」
「そんな話し、していませんよ」
作り笑いを浮かべる彩と文彦に、部長の麗人は呆れた目を向けた。
「伊集院さん。せっかくお招き頂いた大切なお時間の中、恐縮なのですが。どうしてもお伝えしておきたい事がありますので。お伝えしても宜しいでしょうか? 」
お? もしかして、あの動画を見せてくれるのか?
麗人はちょっと期待して、部長の麗人を見た。
「人の信頼を横から裏切るような真似は、決してしてはいけないと思っていました。伊集院さんが、朝丘さんをとても信頼して交際されているのを知っていましたので。ですが…この真実を伝えないままでは、きっと一生後悔すると思うので。この場を借りて、言わせてもらいます」
部長の麗人は携帯電話を取り出し、動画を再生した。
給湯室のドアの向こうから、史彦と彩の声が聞こえて来た。
「ねぇ文彦さん。いつになった、優衣里に保険金をかけるの? 」
「そりゃぁ結婚してからに決まっている。保険金を受け取るには、夫じゃなくてはならないからな」
「そうね。もう婚約しているから、受け取る資格は十分あると思うけどね」
「そうだが、優衣里の父親のご機嫌もとっておかなくちゃならないだろう? なんせ、相手は弁護士だから。怪しまれたら、保険金を受け取れなくなるからな」
「確かにそうね」
チュッと2人がキスしている音が聞こえて来た。