逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~
「ちょっと、あれは何なの? 」
彩が文彦にこそっと言った。
「しらねぇよ! 何で部長が、あんな動画とっていたのか知らないけど」
「もしかして、あの動画以外にも、何かもっているんじゃないかしら」
「取り合えず、この状況を何とかしないと」
コソコソと文彦と彩が話している様子を、部長の麗人は横目で見ていた。
間もなくして運転手がやって来た。
とりあえず文彦と彩は先に帰る事になった。
文彦は帰り際に。
「優衣里、本当に誤解だ。俺を信じてくれ」
と言った。
「保留なので、答えは暫く待って下さい」
それだけ答えた麗人。
「自分もそろそろ帰ります」
部長の麗人が言った。
「部長、有難うございました。あの動画、とても有力な証拠になりそうです」
「いえ…波風を立てたようでしたら、申し訳ございません」
「大丈夫です。もともと、彼と交際して婚約したことを迷っていたので」
「そうなのですか? 」
「はい…」
まだチャンスはあるって事。
ここで素直になれよ、自分。
麗人は部長の麗人を見つめてそう思った。
「九条さん」
優造がやって来た。
「いつも娘がお世話になっています。優衣里の父、伊集院優造と申します」
「いえ、こちらこそ娘様にはいつも無理ばかり申していますので。恐縮です」
「再程の動画ですが、私の方に送ってもらる事はできますか? 」
「はい、できますよ」
「では、こちらの名刺にあるアドレスにお願いします」
優造は部長の麗人に名刺を渡した。
「畏まりました。では、後程お送ります」
「今、運転手が先ほどの2人を送って行っていますので。戻るまで、お待ち下さい。ご自宅までお送りいたしますので」
「いいえ、大丈夫です。我が家からも迎えに来てもらえますので」
「そうですか」