逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~
父と娘の本音
このまま帰ってもらった方がいいのだろうか?
でも、もう少し…いたいだろう? 優衣里さんと。
麗人は部長の麗人の袖を引っ張った。
「あの、部長。もう少し、お話しませんか? 」
「え? 」
「だってまだ…」
テーブルの上のカップを指さした麗人。
「珈琲が残っています。それに、ほらデザートも食べていないじゃないですか」
部長の麗人は残っている珈琲とデザートを見た。
「それでは、一緒にデザート食べてもらえますか? 」
メガネの奥で麗人の目が照れていた。
「優衣里、良かったら庭に出てみてはどうだ? 」
優造が声をかけて来た。
ちょうどデザートを食べ終わり、珈琲も飲み終えた所で、外の日差しも心地よくなっていた。
立派な日本庭園が広がる伊集院家の庭。
赤い敷物が敷いてある腰掛と、ジャノメ傘が立っている風景を見ると抹茶とおまんじゅうを食べながら優雅にお茶をたてる風景が似合いそうだ。
ゆるやかに流れる池には、石橋がかかっていてその向こうには立派な松の木がたっている。
特別な会話はないが、麗人と部長の麗人はゆっくりと庭を歩いていた。
「あの…」
石橋の上で不意に足を止めた部長の麗人。
麗人もそれに合わせて足を止めた。
「伊集院さんは、犬はお好きですか? 」
「え? 」
じっと見つめてくる部長の麗人。
ああ…もしかして、大学の時に拾ったあの犬の事を聞いているのだろうか?
きっと優衣里さんは覚えていないのだろうと思うけど…。
(犬も猫も大好きです。大学生の時、とっても可愛い雌犬に出会ったのですが。誰かに拾われていなくなってしまって、その犬がずっと忘れられません…)
胸の奥に聞こえて来た声に、麗人は驚いた。
これは優衣里さんの心の声なのか?
そう思った麗人。