逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~
部長の麗人が帰ってから、和服から部屋着に着替えた麗人。
部屋の中ではラフなTシャツに、ゆったりとしたズボン姿で過ごしている麗人。
なるべく体を見ないように着替えをしているが、どうしても見えてしまう事がちょっと恥ずかしい…。
着替えを済ませた麗人は、キッチンで飲みものを飲もうと降りてきた。
すると…。
「先生、どうして私ではいけないのですか? 」
奥の部屋から声が聞こえてきた。
女性の声が気になり、麗人は声が聞こえた部屋へ歩み寄って行った。
1階の奥にある書斎。
そこは優造が仕事をしている部屋だ。
木製のドアがとても頑丈そうに見える。
麗人はそっとドアに耳を当ててみた。
書斎の中には優造と、ちょっと小太りな40代後半くらいの女性がいる。
可愛い系だが、ちょっとわがままそうな顔つきで、長い髪を下ろして若作りをしている。
この女性は優造の秘書で、村上喜代(むらかみ・きよ)という。
現在40代後半になり、離婚してシングルマザーで現在高校生の子供がいる。
優造の事務所で働きながら秘書検定を取得して、5年前から秘書として勤務しているが、その頃から優造に言い寄って来ているが、優造は見向きもしないままである。
しかし喜代は、無理やり迫って行こうとしたり一方的に抱き着いてきたりとあきらめきれないままである。
今日もまた喜代が押しかけて来て、優造に言い寄っているようだ。
「先生、奥様が亡くなられてもう10年以上じゃないですか。これほどまでに忙しい先生が、お一人でいるなんて大変ですよ。私はもう5年以上も先生の元にいるのです。この先、添い遂げるには相応しいと思います」
「君は確かに有能な秘書だと思う。しかし、愛する人とは違う。私は、今でも百里を愛している。その気持ちは、この先もずっと変わらない」
「死んだ人をいつまでも愛していても、触れる事も出来ないじゃないですか」
「それでも構わない。私はこの先、誰とも再婚する気はないし恋愛もする気はない」