逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~
こんなに綺麗なお母さんなら、亡くなった時はかなりショックだったと思う。
優衣里さんが似ているなら、きっとお父さんは見るたびに愛する人を思い出し辛くなるだろうけど、可愛い娘を見てあげたい気持ちも溢れてきてどうしたら良いのか分からなかったと思う。
「お母さんの若い頃、優衣里とそっくりだろう? 」
「はい…確かに…」
「優衣里がメガネをかけて、地味な格好をするようになったのは。ちょうど、喜代さんが私の秘書になった頃からだったな」
え? そうだったんだ。
ちょっとだけ驚いた目を浮かべた麗人。
「そして、沙原コンサルティングに入社してからは笑わなくなってしまった。それなのに、朝丘さんと結婚すると言って来たから何かあったのだと思っていたんだ」
我が社に入社してから笑わなくなったって、なんで?
何があったんだ?
「優衣里。お母さんも言っていただろう? 幸せになりなさいって。結婚は、心から愛する人とするものだ。あんな動画を撮られるような人に、大切な娘を嫁にやるわけにはいかないと、父さんは思っている」
「婚約は保留にしましたので。あの動画を調べて、ハッキリしたら断ろうと思っています」
「わかった。父さんは、どちらかと言うと部長さんの方が優衣里を幸せにしてくれる人だと思ったよ」
「え? 」
わぁ…なんだか自分の事を言われると、恥ずかしいなぁ…。
「でもあの人の事を、どこかで見たことがあるような気がするんだ。九条と名乗っていたが、もしかして九条財閥の息子さんなのかい? 」
「く、詳しくは分かりません。そんな、部長とプライベートな話しをした事はないので」
「そうか。まぁ、家柄は別として部長さんはとても誠実な人だと思うよ」
どう答えていいか分からないけど。
何となく胸の奥から喜びが溢れてくるのが分かる。
ちょっと自分の事で照れ臭いけど。
「喜代さんの事は気にする事はないから、無理な結婚は選ばないでくれ」
「…はい、考えます…」
これは…もしかして、親子のすれ違いから優衣里さんは望まない結婚を選んだのだろうか?
リビングで飲みものをもらって、麗人は部屋に戻った。