逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~
部屋に戻ると窓の外を眺めながら、麗人は優衣里が入社して来た時の事を思い出していた。
桜の花が散り始めた春。
この季節になると、麗人はいつも後悔ばかり思い出していた。
優衣里に気持ちを伝えておけばよかった…別々の道へ進み、きっと、もう会えないって分かっていてもこの想いはずっと消えない。
こんなに愛しているなら、探し出してでも気持ちを伝えるべきだった…。
オフィスの窓から見える街並みを見ながら、麗人はいつも優衣里の事を思い出していた。
席に戻ると、新入社員の名簿がデスクの上に置いてあった。
営業部も新人を一人入れてもらわないと、寿退社した女子社員がいるから代わりの女子社員を誰か…。
そう思いながら新入社員の履歴書を見ていた麗人は、驚いた顔をして手を止めた。
「…伊集院優衣里って…。間違いない、彼女だ…」
履歴書を見て麗人は手が震えていた。
履歴書の写真の優衣里は、大学の頃とは変わってしまい表情がなく暗い感じで、地味なグレーのスーツに大きな縁取りのメガネをかけて髪を一つ結びに結っていた。
大学の頃はとても微笑ましく柔らかい表情だったのに…履歴書の写真だからなのか?
「あ、こちら営業部ですが。先日退職した、女子社員の代わりの増員をお願いしたいのですが。こちらから、指名をさせてもらって宜しいでしょうか? …新入社員の、伊集院優衣里さんを営業部に所属させて下さい。…え? そうなのですか? 」
優衣里を指名した麗人だったが、優衣里は法律事務所経験者という事で法務部が指名してきていると人事に言われたのだ。
「ご本人は、どこか希望している部署はあるのでしょうか? 」
そう尋ねると人事からは「営業関係で外に出たいと希望している」と言われた。
それなら是非営業部にお願いしますと、麗人が押した。
少し検討させてほしいと人事に言われた麗人は、直ぐに社長室へ向かった。