逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~
驚いて茫然となってしまった麗人だが、頬には涙が伝っていた…。
「優衣里さん…ごめん…」
愕然と膝をついて、その場に崩れてしまった麗人はそのまま泣き崩れてしまった。
「ごめん…僕がもっと、素直になっていれば…。僕は、優衣里さんが覚えていないのだと思ってしまって…優衣里さんを見ないようにしていただけなんだ…。何度も、声をかけようとして歩み寄ろうとしたのだけど…。優衣里さんは。僕を覚えていないと思ってしまって…。あの時…あの男と楽しそうに話していても、優衣里さんに珈琲を渡していれば…。あんな悲惨な結婚はなかったんだ…」
悔しくて…悲しくて…麗人は自分で自分が嫌になってしまった。
ずっと想い続けてきた人に再会したのに、勝手に覚えていないなんて勘違いして…。
冷静に考えれば大学を卒業して数年経過していて、自分は正体を隠して勤務していて苗字が違っているのだから、優衣里さん気が付かなくても仕方ないのに…。
(そんなに自分を責めないで…)
どこからかふと、聞こえてきた声に麗人はハッとなった。
(悪いのは、私も同じ。…何度も、部長に声をかけたかったのに。嫌われているのだと、そう思い込んでいたから…)
な、なんだろう…この声は…。
もしかして…優衣里さん?
麗人はそっと目を閉じて、胸に手を当ててみた。
すると。
メガネをかけて生真面目な優衣里が見えてきた。
そして、メガネの奥で優衣里はニコっと笑った。
(来てくれて有難うございます。部長…)
そう答えた優衣里は、普段の生真面目な表情ではなく、あの大学生の時の優しく微笑ましい優衣里の表情だった。
(…部長。…私の為に、死のうとしないで下さい。…死んでしまったら、二度と会えないじゃないですか。今こうして、部長が私の中に来てくれた。…もう一度、私の人生をやり直す事を手伝って下さい…)
どうゆう事なんだろう?
僕は、もしかして優衣里さんに呼ばれて、優衣里さんの体に入って来たのか?
(やり直しの人生は、部長に素直になる私でいて下さい。…そして、萩野さんと朝丘さんを結婚させて下さい)
萩野さんと朝丘さん。
そもそも結婚する目的があるのだから、そうなるのが一番だろうなぁ…。