逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~

「朝丘さんは外回りに行ったから、部署に戻っても大丈夫よ。また何かあったら、いつでも言って来てね」
「はい…有難うございます。それでは、失礼します」

 麗人はそっと頭を下げて、社長室を出て行った。

「全く、あの朝丘さんって噂さ通りの人なのね」
「伊集院さんと付き合う前から、毎晩のようにキャバクラに行って豪遊していると聞いている。よく萩野さんと一緒に居るようだが、萩野さんも男遊びが激しいと聞いているからな」
「似た者同士、くっつくのね」

 鷹人は内線をかけた。

「あ、もしもし。今、伊集院さんが書類を届けに来てくれたよ。…麗人、伊集院さんの事をしっかり見てあげなさい。…お前、彼女の事がずっと好きなんだろう? … …隠す事ないじゃないか。見ていればかわるよ、お前があんなに必死になって伊集院さんを営業部にお願いしてきたのは。彼女への想いが忘れられないからだろう? …なぁ、麗人。…本気で愛する人には、たとえ相手に婚約者がいても自分に正直になる事だと思うぞ。人を愛する気持ちは、相手がどう想っていようとも変わる事はないのだから。素直に自分の気持ちを認め正直になる事だ。先ずは、お前から素直になるんだ。なかなか、彼女からは素直に歩み寄れないと思うから。…それから、朝丘さんがちょっとむきになっているようだ。気を付けて見ててくれ…」

 内線を切った鷹人は小さく笑った。

「お互いに想いやっているんじゃないのかな? 」

 そう呟いた鷹人。

「貴方、しばらく伊集院さんと私、仕事を変わろうと思うのだけど」
「ん? 伊集院さんが、私の秘書になってもいいのか? 」
「ええ、いいわよ。貴方だって、たまには若い子が傍にいると嬉しいでしょう? 」

 ちょっと意地悪そうに笑いを浮かべた麗香。

「そうかもな」
 
 鷹人もちょっと意地悪そうに答えた。

 2人とも目と目を合わせてクスッと笑った。



 営業部に戻って来た麗人は、いつも通り仕事を進めていた。


 11時を回る頃に彩が戻って来た。

 席に座るとついたて越しにじっと、部長の麗人を見ている彩は何か企んでいるような目をしている。

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