逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~
「俺、沙原麗人とは双子の兄弟なんだ。苗字が違うのは、俺は産まれた時に母さんの実家に養子に行ったからなんだ。兄貴とは、苗字が違っても学校はずっと一緒で仲良くしているんだ。だから、兄貴が好きな人はたとえ兄貴が言わなくても俺には分かるんだ」
「そうなんですね」
そう言えば純也は黙って見ているけど、直感鋭かったもんな。
「ねぇ、あんたは兄貴の事覚えてない? 」
「兄貴って沙原麗人さんですか? 」
「うん。覚えてない? 」
なんだ? この展開。
前の時は純也が出て来てこんなこと聞いたりしなかったと思うけど。
「覚えていないわけじゃありませんけど…。きっと、沙原さんの方が忘れていると思っているのですが」
「え? 忘れるわけないじゃん。兄貴はずっと、あんたの事を忘れられないんだよ」
うわぁ…。
これ、前の時にもあったなら優衣里さんの気持ち、変わっていたのかな?
「あんたも素直になれば? そんなに綺麗な顔しているんだから、他にも言い寄ってくる男はいるだろうけど。俺は兄貴の事、推奨するよ」
そんなこと言われると照れちゃう。
けど…有難う純也。
「…ご心配なく、素直になると決めたので。…ろくでもない男の事は、切り捨てる事にしました」
「そっか。何かあったら、いつでも俺に言ってくれ。アンタの一番の味方でいるからさっ」
「有難うございます」
すっと、純也は名刺を差し出してきた。
「これ俺の名刺。本業は探偵なんだ」
名刺を受け取った麗人。
ああ、私立探偵やってるんだよね。
せっかく弁護士になれたのに、探偵が面白いって言って。
「名刺に書いてある携帯番号に、いつでも電話くれよ」
「はい、お願いするときはぜひ、そうさせてもらいますね」
純也はニコっと笑った。
「がんばれよ、大切なのは自分に正直になる事だから」
「はい」
なんとなく純也が励ましてくれているような気がした。
前の時は、純也が現れるなんてなかったけど。
もしかして、優衣里さんは純也に会っていたりしたのかな?